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航-11 文化祭 一日目
ひとしきり回っても見当たらなかった。すれ違いまくっているのか、サボって何処かでタバコでも吸っているのか……。諦めて教室へ戻ろうとした時、知った匂いがした。
「いた!」
「……お前か」
非常階段の踊り場に座り込んでタバコをふかしていた。なんか不良みたいな光景だな。
オレの姿を見てもしばらく反応が無くて、笑ってみせると気づいた。
「当たり〜。ていうかサボったらダメだろ先生」
「……あぁ。ちょっとな」
吸い殻を携帯灰皿に入れて仕舞うと立ち上がった。
オレをじっくりと見直して、ウィッグの髪に触れてくる。
「中々似合うな」
「でしょ〜〜、自分でも思う」
おかしくクルリと回ってみせると、フ、と微笑った。
「場所を変えるか」
「うちのクラスおいでよっ、ご奉仕しますよぉ〜〜」
「そうだな。してもらおうか」
先生に手を引かれて上機嫌になっていると、まだ教室からは遠い空き教室へ入っていった。
あ、なるほど、と理解した時には机に腰掛けさせられて、先生の両腕で退路が閉じた。
「まだ一日目なん……」
呆れた声が塞がれた。タバコの味がする。
啄むようなキスしていると片手が頬を撫でてきて、舌は唇をつついて、オレは口を開いて迎え入れた。オレのと絡むとその味を濃く感じる。唸るような吐息を漏らすと一旦離された。
「……タバコ嫌い」
「お前が代わりをするならやめよう」
「んぇー」
「さて、奉仕してくれるんだろう……?」
オレはよくふざけるけど、顔に似合わず先生も乗ってくるんだよな……。前の印象とは違うけど、口端を上げるその表情は色っぽくて好き。
学校だけど、せっかくの文化祭だしこんな服も着てるし……と、はやる手に言い訳を付けて、上目遣いで誘うようにして笑う。
「はい、ご主人様。何なりとお申し付けください」
押し倒される直前に、消しかけた理性が戻ってきた。
「あっでも、服返さなきゃいけないから汚すのはダメだからね」
「……そうか。残念だな」
「なんで笑っているのかなっ!」
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