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依-41 不本意の螺旋

 離れると同時に服の袖口で顔を拭った。目元や鼻の赤みは寒さの所為にできる。  夏道の表情も沈んでいて、空いていた俺の手を掴むと目を合わせて口を開いた。  また泊まりに来て欲しいと頼まれた。  少しでも長く一緒に居るにはどうしたらいいか考えた結果、前の習慣を思い出したらしい。  連泊は流石に断った。今更、家の人に迷惑になるという理由は使えなかったが俺は秘密にしている勉強をしなくてはならない。  こんなのは本意ではない。  気持ちが溢れていても冷静に思考は回って、とりあえず今晩だけという条件で家に上がらせてもらう事にした。  特に会話はなく、もう遅い時間だからすぐに寝る準備をして横になった。  寝付くより先に後ろから抱き締められたのは心臓に悪かった。  さっきの俺の言い方で距離を置かれたと思って寂しくなっているのかもしれない。頭を擦り寄らせてくる気配にまた胸が詰まる。  少し経つと腕の力が抜けて、徐ろに触れてみた。反応が無いので眠ったと察して静かに起き上がって抜け出した。  やはり疲れていたようでぐっすり眠っている。布団を掛けなおして寝顔を覗き込んだ。  特別な関係なのは確かだ。  だからといって、恋人とするような事までしてしまったら駄目だろう。  好意の線引きをしないこいつには、きちんと言ってやらないと。 「……ごめん」  寝顔に向けてつぶやく。  俺の気持ちははっきり分かれてしまっている。  お前に対して恋愛感情を持っているんだよ。  将来の夢も、夏道とずっと一緒にいたい動機があってのものだ。  なのにさきの頼みを断ったのは本末転倒とも思うけど、未来のことを考えて今は勉強を頑張らなきゃいけないから。  不純でいながらこれ以上関係を深めてしまったら、本当に好きな人ができた時混乱するだろう。その時に、俺との関係のおかしさに気づく筈だ。  足枷になって迷惑をかけたくない。  役に立ちたいんだ。  これからも一緒に居られて役に立てるなら、この感情を抜きにしてもいい。  こんなのは本意ではない。  俺の本当の気持ちはずっと変わらず単純だ。  それを自ら言い訳や建前で塗り固めて複雑なものに変えてしまった。  時々、言ってしまいたい衝動に駆られるけど、喉元で止まって何度も飲み込む。  特別な関係になればなるほど怖くなる。  そうさせているのも俺自身だ。  芽生えた気持ちに違う名前をつけて隠して、その切なさに苦しんで言いたい気持ちに駆られて、けれど今の関係が崩れるのを怖がって黙って。  それを何度も繰り返している。  俺はひとりで何をしているんだろう。  いつまでこんな馬鹿なことするんだろう。  ただ好きなだけなのに。  どうしてこうも面倒くさいものに変えてしまったんだろう。

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