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依-49 強制イベント 続
「かわいい〜〜」
「いっそ殺してください……」
「そんなオーバーな。もう一枚撮るよ」
結局着てしまう自分が恥ずかしい。いや、全部この人のせいだ。
俺は今もこの家の姉弟にされるがままなんだ。
夏道には見せないでほしいと強く言っていたら墓穴まで掘った。
勘付かれて、最終的に告白し合ったことを自白した。「やっとか」と言われた時は開いた口が塞がらなかった。この人は本当に恐ろしい。
呆然としていると撮影会が始まっていた。恐ろしい。
「次座って、膝立てて」
楽しみつつ真剣に撮っている。
何にせよ俺の気持ちには構ってくれない……。
「写真……すぐに消してくださいよ」
「うん、送るとこに送ったらね」
普通に怖い。
「そのまま足開いて、裾下に引っ張って。……トランクスか」
「海夏さん」
「何も言ってない」
プロ風に体勢を変えつつカメラを向けている姿をにらんでいるのに気にもしない。
開いた足の間の前に寝そべって、下から見上げるような角度になった。ただ目で追っていたところでハッとして足を閉じた。
「どっ何処から撮ってるんですかっ! 変態ですかっ」
「撮れた」
「くそ……っ」
「依、お下品」
なんでこんなことしてるんだ。
「もう脱ぐ……」
前のリボンを解いて緩めるとシャッター音がした。
「こらっ!」
「アハハ」
撮った写真を眺めてニヤついていて腹が立ってくる。逆らえない自分も馬鹿だ。撮られたものをあいつに見られた日には雲隠れしたい。
「……依が相手で、ホントに安心したよ」
着替える為に脱衣所へ立とうとした時、携帯画面に目を落としていた海夏さんが声のトーンを変えず話し出した。
「アイツさ、絶対似てほしくない人に似てるんだ。似ないように気をつけてるのが逆にダメなのかな。感情の抑制も出来るようになって大人しくなったけど、無意識で自分の思い通りにしようとするところがあってさ」
画面に触れていた指が止まる。
「最近のアイツは信用してるけど、相手側が心配だったんだ。傷つき合うのを見るのは二度と御免だから」
顔を上げた眼差しは優しくて、心から嬉しそうにしていた。
「だから、アイツをそのまま受け入れてくれてる依が、相手になってくれたらいいのにって思ってた。よかった」
所々濁す言い方ではっきりと理解できない。
でも他人に話すような軽いものでないのは分かる。自分のタイミングで大事なことを打ち明けてくれているようで、とりあえず黙って聞いていた。
話の区切りを見つけて伺ってみる。
「先に……、着替えてきていいですか」
「えー、じゃあこれで最後ね」
緩めたリボンがそのままで、ずり落ちる頼りない布を手で押さえていた。シャッター音が鳴った直後にそれを思い出して胸元を隠した。ワンピースの下はパンツ以外何も着ていない。
「とと撮ったんですかっ!?」
「ギリセーフだから大丈夫大丈夫」
「何がギリセーフなんですかっ」
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