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大護-1 一華とクロさん

 怠い。  体が重い。 「……あ、起きた」  ……誠じゃない。 「おそようお兄ちゃん。いつものように体調崩して今二日目だよ、気分はどうですか」 「……誠どこ」 「疲れて来れないって。そんなに合宿大変だったの? 誠君もそれで一報くれるなんて本当に律義だよね。ところでこんな時に申し訳ないんだけど一緒に万歳三唱してくれる?」  虚ろな目を少しだけはっきりさせて見たら、一華の目の奥が輝いていた。 「……寝たままでいい?」 「うん」  布団の中から重い両腕を出して、掛け声に続いて万歳した。「もう一回やっていい?」を二回言われて、計三セットした。よほど良い事があったらしい。 「ありがとうございました。お礼にクロさんを贈呈します」  いつのまにか部屋に入っていたクロさんを抱き上げて顔のそばに置かれた。クロさんは背を向けて鎮座する。モフ……。  あ。 「一華。ゴロウの散歩頼める……?」 「任せたまえ、というかして来た。私の体力が上がったのはゴロウのおかげと言っても過言ではない」 「ありがとう」  閉まりかけたドアがまた開いた。 「そうだった、お粥食べる? マミーにレシピ教えてもらって作ってみたの。材料混ぜてチンするだけで意外に簡単だったんだけど味は変なんだよね。お腹は壊さないと思う」 「もらう……」  今度こそ閉まるのを呼び止めた。 「お粥作れたのすごいな」 「フフ……」  俺に似て動かない表情で喜びを滲ませながら顔を引っ込めていった。  少し咳が出そうになって反対側を向いて咳き込む。クロさんは体を倒してこの場で寝る体勢になる。モフ……あ、口に毛入った。  クロさん。  誠がいない。

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