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大護-2 三戸誠志郎

「は〜い、どちらさん?」  三戸家のインターホンを押したら知らない人が出てきた。  髪染めをして暫く染め直してないような毛先が金髪の、一見いけ好かない若い男性。前髪も長く、肩に着きそうな長髪を後ろで結んでいる。  もし俺と誠が付き合ってたら「誰よこの男」的な展開だ。でもこの胡散臭い顔を見るとアイツが頭に浮かぶ。 「あ、もしかして君が大護君?」 「はい」 「へぇ! かわいいね〜」 「どうも」  奥から誠の父親が姿を出した。なんかすごい怖い顔してる。  俺を見ると一瞬驚いて、いつもの親しみある笑顔をくれた。 「大護君、明けましておめでとう。誠志郎に用かな、悪いけどいないんだ」 「明けましておめでとうございます。そうですか」 「大護君も誠がどこにいるか知らないの?」 「はい」  今から心当たりを探すけど。 「連絡先交換しよ? 誠を見つけたらさ、連絡ちょうだい」 「やめろ!! 晃志郎ッ」  おじさんの怒鳴り声、初めて聞いた。おじさんはハッとして怒りを無理に沈めるように顔を背けて首をかく。  「こうしろう」か、もしや誠のお兄さんか。 「……誠、探してきます。あと一緒に初詣行ってきます」 「あ、あぁ……。うん、分かったよ、気をつけて行ってらっしゃい」  気まずそうにしながらも笑顔を作って言ってくれた。軽く頭を下げて踵を返す。  とりあえずいつものランニングコースから、走りがてら探そうかな。 「ねぇ、誠志郎とはどんな関係? 付き合ってたりする?」 「部活仲間です」 「へぇ〜! そういや野球部だっけ、アイツまだ続けてるんだ。熱血のイメージないのにねぇ」  最初に「付き合ってる?」って聞くんだ。普通なら友達と思うのでは。  ていうか何で付いてくるんだろう。一緒に探すつもりなのか。俺の速さに付いて来れるのすごいな、って思ったけどだんだん息荒くしてる。  坂道を上がってしばらく行った小さな公園を見渡したけどいなくて、コースを一周しても見かけない。気づけばこうしろうさんもいない。バテちゃったか。  学校とは逆方向を行ってみる。国道に出てまっすぐ行くと駅があって、その手前に大きめの河川を渡る橋がある。そこまで行きかけて、視界に小さく誠を捉えた。割とすぐ見つかった。  橋の真ん中で川の上流を見つめていて、橋のたもとまで走り着いた俺には気づかない。  誠は……、三戸誠志郎は、俺と同じ学年の男子で、同じ野球部のキャッチャー。  垂れた前髪は普段は下ろしてていつもハーフアップの髪型で、目は細め下唇は厚め、大抵の表情は胡散臭い。目をギュッとさせて歯を見せた笑い方は、純粋さを感じる可愛い所がある。  名の通りの性格で頑固なまでに一度決めた事はやり通し突き通す。面倒臭がり屋だけど何だかんだ世話焼きで優しく義理堅い。女子にキャーキャー言われても少しも鼻にかけないけど、人当たり良く愛想を振りまく。  佇む姿勢は悪くて猫背だ。両手をポッケに入れて、今は機嫌が良くないのか唇を少し尖らせている。  俺は誠志郎が好きだ。  でもアイツは他に好きな奴がいて、叶わない片思いをしている。  だから俺は誠が粉になるまで待ち続けている。  忍耐力には自信がある。

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