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依-59 忍び事
重い。
抱き付かれて眠っていて、こちら側に傾いてるのかいつもより夏道の体重を感じる。この重圧さえ心地よく感じる自分も何だけど。寝返りも打たない奴だからこのままで良し。
最初からその気だったようで、鞄には着替えも入れておりうちに泊まった。俺は自分のベッドで寝れるはずもなく安定位置にいる。
胸元に顔が埋まって、呼吸で揺れる胸板が鼻先に触れる。手で触ると張りのある筋肉に押し返される。眠っている体は一層温かくて、手のひらを広げて触り心地を楽しむ。
「ふふ」
思わず微笑って、脇腹と腕の間に手を差し込んで背中まで回した。
自分からこうするのは恥ずかしくて、するならやはり寝ている時がいい。何の反応も無いので思うまま堪能できる。夏道の匂いをいっぱいにかいで、ぎゅうっと抱き締めて頬をすり寄せた。気持ちが高ぶって笑みが溢れる。
出来るならずっとこうして一つになっていたい。いっそこのまま締め殺されたい。
何度も溢れて止まない気持ちを、伝えるには言うか態度に示さなきゃいけないのは分かっているのに、自分でも歯がゆいくらい口からは出てこなくて。
ちゃんと伝えられたらさっきみたいな顔をさせずに済むかな……。
挟まれている脚を曲げて縮こまるように抱擁する。手のひらを這わせて大きな背中を感じた。
ひと息ついて満足して、布団を掛け直す。全て掛けると俺が埋まるので夏道側だけ引き上げた。体を軽く押し離して身じろいで、顔を見上げると目が合う。
目が合った。
何で目が合う。
前にもあった寝ぼけなのか。でも大分、はっきりとした……。
「……お前さぁ」
起きてた。
布団を頭まで引き上げて潜る。
「そういうの起きてる時にやってくんねぇ?」
「なななななんで起きてるの……」
「眠れなくて。目瞑ってただけ」
「寝ろよ」
気付かなかった。そういえば今回は寝顔を一度確認しただけだった。ちゃんと確認しておけばよかった。
縮こまっていると夏道の腕がもぞもぞ動いて抱き締めてくる。
「いつも寝た後そんなことしてんの」
「してない」
「即答してんじゃん」
くつくつ笑うのが聞こえて、もう、どうしたらいい。
「もうしないの?」
腕を広げて空間を作り覗き込んでくる。とても居た堪れない。見上げず固まっていると布団は肩までにとどまって顔を出されて、首筋を撫でられた。腕を取られてその背中に回すようにされる。
せっかくの楽しみまでバレてしまった。
……でも、知ったところで寝てる時はどうしたって気付かないだろう……。そうだ、こいつが寝ればいいんだ。
「寝ろよ……」
「寝込み襲う気満々かよ」
人聞きの悪い事を言わないでほしい。
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