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誠志郎-28 この縁は腐れた赤色か
一学年の最後の時期が来た。
まだ寒いからマフラーも巻いて通学路に立っている。程なくしてアイツも家から出てきたのが見えて、来るのを待った。
日課でも登校でも待ち合わせているが、これも大分流されてる気がする。ただの友達なら変に考える必要は無いんだけど、相手が相手だからな……。
数年の下積みを経て洗脳された感じがするのは俺の気のせいか。
側まで来た大護は一度止まって、俺が歩き始めると隣に並ぶ。
こんな一連の流れなんか気にも止めたことがなかった。
確実に自分の気持ちに変化が起きていて、芽生えた感情もある。
色んな気持ちが渦を巻く心の内を、他人事のように傍観していた。一度に受け止めるには多すぎて。
正直、大護を好きになってしまっている。
でも俺はまだ何も言ってないんだ。卒業後アイツに告白すると決めた事の前に、乗り換えるのは駄目だろう。好きな奴と言えばアイツも浮かぶのは確かなんだ。
こんな半端な気持ちで、お前に言えることなんか無い。
お前は……、いつまで待っててくれるかな。
いつの間にか足を止めて大護を見ていた。我に返ると、真反対に穏やかな瞳を向けられていた。
「どうしたの」
ボソッと言われた。
「……お前さ、何でそんな風でいられんの。何でそんな余裕なの。俺がお前を好きになる確信でもあんの……?」
何も答えられないのに口がモゴモゴしてしまって、寸前で別角度から話を切り出した。
大護は相変わらず、真っ直ぐ見つめてくる。
「うん」
「……こわ……」
断言されて、本当に怖いと思った。
ムズムズして落ち着かなくて先を歩く。
どんだけ……。
「俺はずっと誠が好きだよ」
不意に背中に掛けられて動けなくなった。
振り向く勇気はない。そんな想いに会わせる顔も返事も、持ち合わせてないんだよ。
足音に気付いて咄嗟にマフラーに顔を埋めた。
「赤い」
「寒いんだよ……」
「手繋ぐ?」
「アホか」
顔が赤いのは寒いからだ。
隠すのに必死になってると、微笑い声が聞こえた。
確かに隣から聞こえてすぐ見たけど、いつもの面だった。
「……お前今笑ったろ」
「あはは」
「それじゃなくて」
コイツ、普段でも笑えんのか……?
レアものを見逃した気分の自分に呆れる。頭を掻いて、止まった足を動かしてズカズカ先を行った。
「学校行くぞ」
「うん」
何度止まっていつ歩き出しても、どんな速度でも合わせてくる。学校に着くまでもう見なかった。多分コイツも見てはこなかった。
ただずっと、隣にいた。
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