150 / 161
二十歳 夏道-27 飲み会
集合場所は誠志郎 の住むマンションだ。大護 とルームシェアしていて、男五人いても大丈夫な広さと言うからそこに決まった。
オフシーズンに合わせてくれて、今晩集まる。依と天四も加えて、このメンツで会うのは久しぶりだ。
「十九時以降に来い」とのメッセージを見つめていた。
誠とは、高校の卒業式以来まともに会っていなかった。
あの日、誠に告白された。
言われるまで気付かなかった。中学から一緒に部活をしていたから仲は良い方だと思ってたのに、言われて初めて、コイツの事をよく知っていてやれなかったんだと分かった。
戸惑っていたら、お前の気持ちは分かっていると、ただの勝手なケジメなんだと、やけに晴れた笑顔で言われた。あの顔は今でも思い出せる。
遠くを見ていた景色に我に返って、携帯画面へ目を戻した。
連絡先一覧を開いて依の番号にかける。少し長いコールの後に繋がった。
「準備できたか? 一緒に行こうぜ」
「……なつみ」
柔らかい声に思考が止まった。
「俺代わるわ、……夏道? もうみんな来てるぞー、早く来い」
「は?」
代わりの声が言うには、依は一時間ほど前に先に行ってたらしい。俺を省いて飲み会は既に始まっていた。
誠のあの連絡は悪気があったようだ。白い息を吐いて一人で向かった。
ドアを開けたのは頬を赤らめたニヤけ顔の誠だ。クリーム色のスウェットに黒い長ズボンの姿は少しだらけていて、酔ってるみたいだが足取りはしっかりしている。
顔を見た瞬間は内心気まずく感じたけど、前と変わらない表情を向けられて安心した。
「仲間外れかよ」
「あはは、アンタがいたら止めただろうからさ」
「どういう意味だ」
「まぁ見てみろよ」
言いながら靴を脱いで自分も上がり、誠の指差す方を見た。ドアの擦りガラス越しに座っている背中がある。脱いだダウンジャケットは壁のフックに掛けられた。
クツクツ笑う奴を背に数歩で済む廊下を行ってドアを開けると、すっかり開催されている景色が広がっていた。
「夏道くんだぁ〜やっほー、いっくんほら、きたよ〜」
こたつテーブルの四辺にそれぞれいて、空いている左側に誠が座った。時計回りに、控えめに手を振って目を合わせてきた大護、典型的に酔っ払っている天四、肩をポンポン叩かれた依が振り向いて俺を見上げた。
電話越しで聞いた声からしても少なからず酔っている。目が合うと破顔した。
状況把握の前にその顔を手で覆い隠して、腰を下ろして背中を抱いた。
「どうなってんのコイツ」
「アハハ、依君ってば、すごい酔うんだよ。めちゃくちゃ素直でさ、俺らが何してもされるがままでさ、超ウケる」
「いっくんお酒のめるよ〜、かわいいんだよ〜」
「お前はもう飲まない方がいいんじゃねぇの」
「えへへぇ〜」
テーブルにはつまみと酒缶が乱雑に置かれている。肘をついても支えにならず頭がずり落ちていく奴に呆れた。
「ねぇ、もっかいもっかい」
天四が楽しげに依に声を掛けた。コイツは覆う手を避けもせず大人しく黙ったままだ。
「ねぇ、夏道くんのことすき〜?」
「うん」
割とすぐ答えられて目が丸くなる。
この酔い方は……、ヤバイだろ。
ともだちにシェアしよう!

