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第3話 *

 付き合って三年、同棲を始めてから二年が経った宮代と織辺は、どこにでもいる普通の恋人――とは、少し違う。  そのことに、二人は気付いていなかった。  大した準備もされないまま、後孔で織辺の逸物を咥え込みながら、宮代は体を震わせる。  ソファに寝そべったまま犯され、耐えるように宮代は、自身の手の平に爪を食い込ませた。そんな宮代を見下ろす織辺の視線は、どこまでも冷たい。 「何だよ、その顔。文句でもあんのか」  眉間に深く皺を刻み、下唇を噛んでいる宮代の表情は……織辺からすると、生意気に見えるのだろう。  しかし、宮代はそんなつもりで見上げているのではない。  ――痛みという快楽を、必死に耐えているだけだ。  深々と貫かれると、こじ開けられる痛みに悲鳴が出そうだった。下唇に歯を食い込ませ、血を流しても、宮代は耐える。 「すっげぇキツイ……淫乱のくせに、ココはいつまでも処女みたいだな」 「……っ、ぅ……ッ」 「なぁ、そんなに怖い顔するなよ」  腰の動きを止めた織辺の、大きな手が宮代の目元を拭う。不意に向けられた優しさに、宮代は堪らず……頬を手に擦り寄せた。  ――だが、織辺がそんな優しさを自分に向けるだなんて……ある筈が無い。  織辺の手は、宮代の長い前髪を乱暴に掴み、隠れている瞳を暴くように、上へ持ち上げる。  晒された瞳は、織辺を映していなかった。 「ははっ! 思い出すなぁ……俺達が初めて、体を重ねた日をよ」  織辺の言葉を聞き、それまで反応を示さないよう硬直させていた体が、突然……小刻みに震え始める。織辺との初夜を、思い出したからだ。  ――織辺と初めて体を重ねた日、宮代は片目を失明した。  あの時から、織辺がいかに危ない人間なのか……宮代は知っている。文字通り、身を持って……だ。  目に見えて怯え始めた恋人を見ても、織辺は笑みを浮かべたままだった。 「はぁ……はっ、ぁ……っ」  浅い呼吸をし始め、光の宿る片方の目だけで織辺を見つめ、宮代は手を伸ばす。 「オ、オレ、から……織辺さんを、奪わないで……っ」  ――それは、心からの言葉だった。  腕を伸ばされたことに対し、織辺は笑みを消し、眉間に皺を寄せるけれど……それでも、宮代は腕を下ろさない。 「織辺さん……好き、です……っ」  暴行を受け、傷付き、片目を失い……それでも宮代は、織辺を愛していた。  逸物を咥え込む秘所が、愛おしむようにきつく締まる。まるで呼応するように、宮代の逸物も、小さく震えていた。  それら全てに気付いた織辺は、もう一度笑みを浮かべる。 「あぁ。俺も、愛してるよ」  そう囁き、織辺は再度……乱暴な抽挿を、再開した。瞬間、宮代の口から情けない悲鳴が漏れ出る。 「ひぎ……ッ!」 「ははっ! ブサイクな声!」  腰を落としたことにより、近付いた織辺の上半身に腕を回し、宮代は涙を流した。泣き出し、悲鳴をあげていようと……織辺の笑みは消えない。むしろ、輝きが増しているようにも見える。

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