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第5話

 浴室まで、織辺が宮代を抱き抱えて、運んでくれた。それだけでも、宮代からしたら贅沢すぎるご褒美だ。それなのに、体を洗ってもらえるだなんて……こんなに幸せでいいのかと、一周回って宮代は怯えてしまう。  運んでくれている途中、織辺は何度も宮代にキスをしていた。それが嬉しくて、宮代は織辺に力いっぱい抱き付く。  浴室に着くと、織辺は宮代のことを優しく、バスチェアに座らせる。そんな所作にも、宮代は頬を紅潮させた。 「織辺さん、好きです……っ」  愛の言葉を囁くと、織辺にキスをされる。 「俺も、宮代を愛してる」  宮代は織辺と付き合ってから、自分が【世界で一番幸せだ】と、思わなかった日は無い。それ程までに織辺を愛していたし、織辺に愛されていると信じているからだ。  夕食を用意してくれて、キスもセックスもしてくれる。目に見えるところに刻まれた傷痕は、所有物だという見せ付けと、愛の証。  ――宮代は、自分が傷付けば傷付く程……愛を再認識する男なのだ。  もう一度唇が重ねられ、宮代は織辺の首に手を回す。織辺の大きな手は、宮代の後頭部に添えられた。  失明しようと、殺されかけようと、レイプまがいのセックスをされようと……宮代は、幸せなのだ。  唇が離れ、目の前に座る織辺を見つめる。  ――すると、織辺と視線が交わらないことに気付く。 「織辺さん?」  織辺の視線は、宮代の顔を見ていない。伏せられた瞳の先を視線で追うと、宮代は小首を傾げた。  織辺が見ているのは、宮代の逸物だったからだ。  今更、羞恥心なんて欠片も湧いてこないけれど……あまりにも真剣に見つめられるものだから、宮代は脚を閉じようとする。  ――が、その前に、太腿を織辺に掴まれた。  閉じるどころか、更に脚を広げさせられ……宮代は目に見えて狼狽する。 「どうか、しましたか?」 「邪魔だなって」  意味不明な呟きに、宮代はもう一度小首を傾げた。  宮代の心情を知らずか、織辺が突然立ち上がる。そのまま一度、浴室から姿を消した。

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