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第9話

 宮代はそれでも、自身の綺麗な局部から目を逸らせない。織辺に愛された証が刻まれていない局部は、宮代を責めているようだ。  泣きじゃくる宮代の髪を掴み、織辺は自身に視線を向けさせる。 「泣くな、鬱陶しい」  瞳から大粒の涙を溢れさせる宮代は、自身を冷たく見つめる織辺を、見上げた。 「オレは、織辺さんが、好きです……っ」 「知ってる。俺もお前が好きだ」 「でも、綺麗なところは……愛されて、ないから……っ」  眉間に皺を寄せて、織辺は宮代を見下ろす。  首や上半身に残されている、無数の傷痕……下半身にも、痛々しい暴行の痕が残っている。そんな中、局部だけは……美しいままだ。  織辺はようやく、宮代の言いたいことを理解する。 「あぁ、なるほど……ココも、痛めつけて欲しいって?」  宮代が、力強く頷く。  懇願するように見上げられ、織辺は思わず、優しい笑みを浮かべた。  ――けれど、織辺は優しい人間では、ない。 「嫌だね」  バスチェアに座った宮代を突然、タイルに押し倒す。打ち付けられた体に鈍痛が走り、宮代は顔をしかめた。 「これから、ずっと、永遠に。そこは綺麗なままだ」  口角を上げて、織辺はそう宣言する。  先程まで、織辺が握っていたカミソリへと、宮代は視線を注ぐ。  その刃を、突き刺してくれたら……そう願っても、織辺は聞き遂げないだろう。  ――それは、呪いだ。  愕然とする宮代に、織辺は触れるだけのキスをする。秘所に指が這い、これから自分は、もう一度犯されるのだという期待感より……絶望感が勝った。 「嫌、嫌です……っ!」 「さっきは酷くしちまったし、今度は……うんと優しく抱いてやる」 「……ッ! 嫌ですッ! やめっ、お願いしますッ! 優しいのは――」  口答えする宮代を、普段の織辺なら暴力で黙らせる。けれど、今は違った。喚く宮代の口をキスによって塞ぎ、いやいやと首を振る頭を優しく撫でる。  ――その光景はまるで、どこにでもいる普通の……幸せな、恋人同士のようだった。

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