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スイカにはバイアグラに似た効果があるらしい1
イベント企画会社に勤務する俺は土日も出勤することが多く、八月後半は毎年目が回るほどの忙しさである。
例年、酷暑の中で仕事をすることが多いのだが、今年は運よく(?)雨や曇りの日が多かったせいで、いつもの年寄りは外での仕事も苦に感じなかった。
同じ暑さにしても、ギラギラと直射日光に照らされるのとそうでないのとでは、まるで違う。
曇天、最高。
……この油断が災いしたのだろうか。
日曜日、いつものように外イベントの手伝いをしていたところ、午後になって急に体調が悪化。軽い熱中症にかかってしまったらしい。
そのまま家に帰されたはいいが高熱を出してしまい、ずっと会社を休む羽目になってしまった。
「タカアキ、大丈夫?」
ソファでグッタリする俺に、ヒサトが心配そうに尋ねる。
氷がたっぷり入った麦茶を受け取って一息に飲むと
「もう大丈夫」
と言って、ヒサトの頭をクシャリと撫でた。
ほんと、ヒサトにも心配かけたよなぁ……。
発熱した夜はオロオロしながらも、病院に付き添ってくれたり一晩中看病までしてくれた。
熱が下がった今もこうして、献身的な世話を続けてくれている。
俺の恋人はなんでこんなにかわいいんだ。ほんと最高すぎるだろ。
「お昼ご飯どうする?」
「うーん……」
正直まだ、食欲はあまり戻っていない。
熱中症のせいと言うよりも、ずっと家に閉じこもって体を動かしていないせいだろう。
「そうめんとかなら食えるかな」
「わかった。じゃあ後で茹でるね。あとさ、ボクちょっと出かけてくるよ。大学の友だちがね、スイカ売ってるスーパー教えてくれたんだ」
「へぇ」
「八月後半くらいから、どこのスーパーでもスイカを見かけなくなったじゃない。この時期にスイカ売ってるなんて、貴重だよね」
「そうだな」
ヒサトはそんなにスイカが好きだったのか。知らなかった。
来年はヒサトのために、スイカをいっぱい買ってやろうと心に誓った俺だった。
**********
「ただいまー」
「おう、お帰り」
夕方になり、スイカの入ったレジ袋を持ったヒサトが帰ってきた。
「スイカっていうからさ、てっきり丸ごとか半分くらいにカットされてるやつかと思ったら、これだったよ」
少し大きなプラ容器に入っていたのは、四角くカットされた小さなスイカだった。
「店員に聞いたらさ、もう丸ごとなんて売ってないんだって。ガッカリしちゃった」
「それでもスイカはスイカだろ? 買えてよかったじゃないか」
「まぁ、それはそうなんだけどぉ……」
ヒサトは不満顔のままで、冷蔵庫にスイカを入れた。
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