6 / 10

スイカにはバイアグラに似た効果があるらしい1

 イベント企画会社に勤務する俺は土日も出勤することが多く、八月後半は毎年目が回るほどの忙しさである。  例年、酷暑の中で仕事をすることが多いのだが、今年は運よく(?)雨や曇りの日が多かったせいで、いつもの年寄りは外での仕事も苦に感じなかった。  同じ暑さにしても、ギラギラと直射日光に照らされるのとそうでないのとでは、まるで違う。  曇天、最高。  ……この油断が災いしたのだろうか。  日曜日、いつものように外イベントの手伝いをしていたところ、午後になって急に体調が悪化。軽い熱中症にかかってしまったらしい。  そのまま家に帰されたはいいが高熱を出してしまい、ずっと会社を休む羽目になってしまった。 「タカアキ、大丈夫?」  ソファでグッタリする俺に、ヒサトが心配そうに尋ねる。  氷がたっぷり入った麦茶を受け取って一息に飲むと 「もう大丈夫」  と言って、ヒサトの頭をクシャリと撫でた。  ほんと、ヒサトにも心配かけたよなぁ……。  発熱した夜はオロオロしながらも、病院に付き添ってくれたり一晩中看病までしてくれた。  熱が下がった今もこうして、献身的な世話を続けてくれている。  俺の恋人はなんでこんなにかわいいんだ。ほんと最高すぎるだろ。 「お昼ご飯どうする?」 「うーん……」  正直まだ、食欲はあまり戻っていない。  熱中症のせいと言うよりも、ずっと家に閉じこもって体を動かしていないせいだろう。 「そうめんとかなら食えるかな」 「わかった。じゃあ後で茹でるね。あとさ、ボクちょっと出かけてくるよ。大学の友だちがね、スイカ売ってるスーパー教えてくれたんだ」 「へぇ」 「八月後半くらいから、どこのスーパーでもスイカを見かけなくなったじゃない。この時期にスイカ売ってるなんて、貴重だよね」 「そうだな」  ヒサトはそんなにスイカが好きだったのか。知らなかった。  来年はヒサトのために、スイカをいっぱい買ってやろうと心に誓った俺だった。 ********** 「ただいまー」 「おう、お帰り」  夕方になり、スイカの入ったレジ袋を持ったヒサトが帰ってきた。 「スイカっていうからさ、てっきり丸ごとか半分くらいにカットされてるやつかと思ったら、これだったよ」  少し大きなプラ容器に入っていたのは、四角くカットされた小さなスイカだった。 「店員に聞いたらさ、もう丸ごとなんて売ってないんだって。ガッカリしちゃった」 「それでもスイカはスイカだろ? 買えてよかったじゃないか」 「まぁ、それはそうなんだけどぉ……」  ヒサトは不満顔のままで、冷蔵庫にスイカを入れた。

ともだちにシェアしよう!