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第6話
津田は二人から目を逸らす。
手元にあるギムレットを煽りつつ、胸の鼓動を落ち着かせようとした。
一瞬にして、彼に惹かれていた。
シェーカーの音がやがて止まり二人のカクテルをマスターが
テーブルに差し出す。
「お待たせいたしました」
「有難う」
そっと差し出されたそれぞれの腕。
手前に見えた、華奢な腕と指。
「葵、零すなよ」
「・・・誰が」
はは、と短髪の男が笑いながら葵と呼ばれた男と奥へ消えていく。
二人が消えたあと、津田は暫く閉口していた。
マスターが訝しく感じたのか津田に話かける。
「ここ3、4回来ているお客様です。ちょうど先週は津田さん来てなかったから初見ですね」
目立つお二人ですから印象に残るんですよと呟いていた。
店内のジャズの音さえ、津田には聞こえていない。
「へえ・・」
そう答えるのが精一杯だった。
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