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第7話

それから津田が通う日に何度か二人を見かけた。 マスターが言う通り「目立つ二人」はどうやっても目立つ。 良く笑う短髪の男は豊と呼ばれいていた。 葵は相変わらず、笑わない。 そんな二人を津田は目で追ってしまう。 否、二人ではない。 「葵」を追ってしまう。 立ち姿や歩く姿だけでも 官能的に見えてしまう。 (クソ・・) 執着しないんじゃなかったのか。 自分が情けなくて、腹がたつ。 「最近、最近元気ないっすね。大丈夫っすか?」 挙げ句の果てに職場で相澤に心配される始末だ。 灰皿はもう満杯になっている。 「煙草の量も増えてるし、津田さん、心配事でもあるんですか?」 佐藤も乗り出して聞いてくる。 「何でもねえよ、溜まってんだよ」 いつになく苛立った津田の言葉に、相沢と佐藤が顔を見合わせる。 *** 実際、葵と出会ってから津田は相手を見つける気分にならない。 だからと言って溜まっていないわけではなく。 葵以外の相手はいらなかった。 むしろ葵で想像してー、自慰していた。 (男子高生かよ、オレ) 豊と呼んでいたその口を重ねたい。 舌を絡ませて頭まで焦れるようなキスをしたい。 官能的な指を咥えながら 抱きあったらあの綺麗な顔はどんな風に溶けるのだろうか。 「・・ッツ 」 こんなに執着してしまうなんてどうかしている、と津田は大きく息を吐いた。 断ち切れないこの感情は、なんだろうか。

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