7 / 12
第7話
それから津田が通う日に何度か二人を見かけた。
マスターが言う通り「目立つ二人」はどうやっても目立つ。
良く笑う短髪の男は豊と呼ばれいていた。
葵は相変わらず、笑わない。
そんな二人を津田は目で追ってしまう。
否、二人ではない。
「葵」を追ってしまう。
立ち姿や歩く姿だけでも
官能的に見えてしまう。
(クソ・・)
執着しないんじゃなかったのか。
自分が情けなくて、腹がたつ。
「最近、最近元気ないっすね。大丈夫っすか?」
挙げ句の果てに職場で相澤に心配される始末だ。
灰皿はもう満杯になっている。
「煙草の量も増えてるし、津田さん、心配事でもあるんですか?」
佐藤も乗り出して聞いてくる。
「何でもねえよ、溜まってんだよ」
いつになく苛立った津田の言葉に、相沢と佐藤が顔を見合わせる。
***
実際、葵と出会ってから津田は相手を見つける気分にならない。
だからと言って溜まっていないわけではなく。
葵以外の相手はいらなかった。
むしろ葵で想像してー、自慰していた。
(男子高生かよ、オレ)
豊と呼んでいたその口を重ねたい。
舌を絡ませて頭まで焦れるようなキスをしたい。
官能的な指を咥えながら
抱きあったらあの綺麗な顔はどんな風に溶けるのだろうか。
「・・ッツ 」
こんなに執着してしまうなんてどうかしている、と津田は大きく息を吐いた。
断ち切れないこの感情は、なんだろうか。
ともだちにシェアしよう!