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第8話
「マスター、アラスカを頼む」
3杯目のオーダーにマスターは少し心配そうな顔を津田に向ける。
「大丈夫ですか?アラスカはかなり堪えますよ?」
アルコール度数が40とカクテルの中でもかなり強い。
それに津田は何時もに増してペースが早く、酔いも回っているようだった。
「いいんだよ、明日は休みだし。飲みてえ気分なんだ」
新しい煙草を取り出そうとして、背広のポケットに手を入れる。
が、上手く取れずに床に転がってしまった。
「何だよもう・・」
箱を拾い上げ、視線を上げると
(ああ)
葵と豊が向かいのテーブルにいた。
ふわふわした葵の髪の毛を、豊が触りながら。
(どう見てもオレが入れる余地なんかない)
酔っていながらもどこか冷静に、胸が痛んだ。
もっと早く出逢えていたら、葵の隣に立てていたのだろうか。
隣に立てていたら、もっとオレはーー
煙草を箱から取り出し、口に咥えた。
火をつけようとした時。
不意に気づく。
隣の男と談笑しながら酒を飲んでいる豊の後ろにいた葵が
(・・え・・)
津田を見ていた。
否、見つめている。
無表情で、綺麗な顔を、紛れもなく津田一人に向けていた。
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