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第10話

「ッツ・・・」 誘われて断る理由など、何処にもなかった。 触りたかった葵がそこにいた。 「声出しなよ。そういう店でしょここ。トイレでヤッてたって誰も気にしないよ」 上目遣いに津田に語りかけて、自分の髪をかき上げると再び津田自身を口に含む。 あの後、酒を飲んでいたフロアからトイレの個室に移動し、乱暴にキスをした。 どちらともなく、舌を絡めながら。 「はッ・・おまえ・・ッ」 高揚しながら津田は葵の頭を抱えていた。 「いいよ、まずはイっちゃって」 「あ・・ああっ!」 囁くような官能的な葵の声に、津田は果てる。 受け止めた葵の口元からタラリと受けとめられなかったモノが流れた。 肩を上下に揺らしながら、津田はぞくりとした。 こんな時ですら、葵が「美しい」と感じたからだ。 「ね、オレで想像しながら抜いてた?」 少し微笑みながら葵が津田の頬を撫でる。 「・・そうだ」 「そう。ねえ、アンタの名前聞いてなかった。なんて言うの」 「弘之」 口を拭って葵は津田に抱きついた。 少しの汗の匂いと煙草の香り。 果てたはずの疼きが、止まらない。 「入れてよ、ひろゆき」 気がつくと葵の頬も、高揚していた。

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