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第7話

「大丈夫。薬も毒も入っていないし、もし、仮に俺がお兄さんをどうにかしたいんだったら、食事中は盛らないことにしてるんだわ」 「何故?」 「食事は人生のうちでも1、2を争う喜びだから? ちなみに、食事と同列なのはセックスだな。相手がいるのでも、自慰とか開発とか相手がいないのでも」 「……」 「それに、もし、仮に俺がお兄さんをどうにかするなら、そうだな? 手っ取り早く、背後から襲って、人に運ばせるかな?」  とファルが笑うと、ジェスは1つ1つの料理を食べ始めた。幸い、料理はどの料理も1人前に取り分けられて提供されていたものはなく、ファルが口にしたものは食べても問題がないだろうという判断だった。 「毒味ってことだろうけど、まぁ、良いや。食事中にはあまり気は進まない話だが、あの病院には一般には公開されていない部屋があるっていう噂があって」 「非公開の部屋?」  ジェスはファルの「噂」という部分に引っかかりつつも、話を促す。 「主に地下なんだけど、降りられるような階段もないし、装置といったものもない。出入り口なき秘密の……あ……」  ファルは追加オーダーを取りに回っている店員に「ここは暫く、大丈夫だ」と人払いをすると、一呼吸おいてから言った。 「国内外の若い男がレクター病院に行くと言い残して、何日も帰って来ない噂とも関係するんだが、俺はその地下の部屋で何かが行われているんじゃないかと考えている」  ジェスの青い目が一瞬、大きく開かれると、ファルは逆に赤みを帯びた茶色の目を閉じる。 「な、何かって?」  ジェスはイルクのことを考えると、動揺してしまいそうになるのを抑えて、必要最低限の言葉でファルに問う。 「人体実験とか?」  ファルの考えにジェスの顔色が明らかに悪くなる。ファルの考えが信憑性がある、とは思えないが、あり得ないことではないともジェスは思った。 「まぁ、レクター病院に敵対する団体とかの仕業ということもあるが、ちょっと関係なしっていうのは、な。その辺りの幼気な子どもでも察しがつくだろう?」  ファルはまたローストチキンに齧りつくと、マンゴーシュを飲みだした。

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