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第8話
「はぁ……」
ジェスは夜が更け切らないうちに、ファルと別れて、自身の借りているホテルに帰ってきていた。何だかんだで、ファルの勧めるまま、酒も食事も済ませたので、身体をバスタブで清めて、ベッドに入るのみだった。
ベッドに入るのみだった……が、ジェスはなかなか寝つけそうになかった。
「人体実験とか?」
ジェスの脳裏にファルの不穏な言葉が何回も浮かんでは消えて、消えては浮かんでくる。
その時にも思ったことだが、ファルの考えを裏付ける根拠は行方不明になっている人物が「レクター病院へ行く」と言って、姿を消していることのみだ。だが、完全に無関係とも思えないし、人体実験は大袈裟かも知れないが、何かが起こっているというのはあり得ないことではないとジェスは思っていた。
「だとすると、イルクは……」
確かに、イルクは病院へ行く為に、レクターへ行っていくと言ったのであって、レクター病院に行くとは言っていないし、仮に行方不明になっていたとしても、レクター病院は一切関係がないのかも知れない。
だが、1人の記者として、そんな非人道的行為が行われている可能性を見過ごせる訳もなかった。
「まぁ、他には手掛かりもないし、レクター病院には何もないならそれに越したこともないしな」
ジェスはイルクの名前を呟くと、無理にでもその青い目を閉じて、眠りにつくことにした。
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