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第10話(R18)
白衣に着替えたジェスは人目を気にしつつも、IDで入れそうなところを片っ端から入っては地下への入口を探した。1つ目と2つ目の扉は処置室に繋がっていて、特に怪しいところもなかったが、3つ目の扉はこじんまりとした部屋に通じていて、多少、木箱が積まれている以外は倉庫としか言えないだろうという風貌の部屋だった。
「確かに、物置は関係者以外は入らないだろうけど」
ジェスは何かが引っかかった。1つ目と2つ目のIDを読み取る機械は銀色をしていたのに対し、この部屋は金色だったのだ。さらに、IDをよく見ると、右下の隅の方へ銀と金の四角があり、これが銀だけだとこの扉は空かなかったということを示していた。
「何か、この部屋にはあるのかも」
ジェスはこの部屋に他の人間が来ないうちに調べを進めると、木箱の陰にボタンを見つけた。
「とりあえず、押すということで良いんだよな」
ジェスは少し迷ったが、ボタンを押すと、この部屋全体の床が一瞬、宙へと浮き上がった状態になり、下へと降りていく。一般公開された各階へ行ける可動式の床は沢山の人間が載れるように大きなもので気づかなかったが、大人が5人程度くらいしか乗れない小さなものもあったのだ。
「つ、着いた?」
ジェスは床が動かなくなったのを確認すると、物置然として部屋をそっと出てみた。
白一色のみ天井と床でできた長細い廊下。壁には大きなガラス窓が左右にある。そして、鼻がおかしくなりそうな匂いと、それ以上に凄い呻き声がガラス越しに聞こえてきた
。
「うぅぅぅ……」
「え……」
ジェスの目には服を何も着ていない若い男の身体中に電極の繋がられたパットが幾つも張られているのが飛び込んできた。また別の男にはチューブのついたマスクのようなものが施されて、薬液のようなものが注がれていた。また別の男にはアナルに人の手ほど太い機械が挿入されて、抜き差しが行われている。
「頼む、もう……殺せ……っっっっっっっ……」
「あああああああ、もう、もぉ、いか……いか、せて……」
絶頂を与え続けられて、死を願う者。逆に、絶頂手前で放り出されて、更なる責め苦を願う者。
左右のガラス窓を合わせると、8人の若い男達があられもない姿で、機械に身体を、精神を犯されていた。
「い、異常だ」
ジェスは何とか、その場に座り込んでしまうのを足に力を込めて、奮い立たせると、廊下の先にある扉に向かう。レクター病院の構造を熟知している訳ではないが、男達を犯している機械の制御をしているのはその扉の先の部屋だと思ったからだ。
「これで……」
ジェスはIDを読み取る機械に、IDを掲げる。扉はプシュっと蒸気を立てて開き、ジェスは部屋の中へ入ろうとした。
入ろうとした、いや、入ることはできなかった。
「あぁ……」
足どころか、全身がまるで強い疲労感に襲われたように動けなくなってしまう。さらに、ジェスとしてはこの上なく、マズいのだが、意識が遠のいていくのが分かった。
「死……ぬ……」
ジェスは何かを言おうとして、「死ぬ」まで声にしたが、そこで意識を手放した。
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