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輝矢目線 3

監察官室でボクは大量の書類に囲まれていた。全てボクが目を通し判を押さなければならないものばかりだった。 「都筑室長、こちらもお願いします」 そう言って藤沢管理官が新たに書類を持ってきた。 「…そこに置いておいて」 ボクはそれらを見もせずそう告げる。 だが、暫くしても藤沢管理官の気配が消えないので顔を上げると、彼が自分の眉間に人指し指をあてた。 「室長、皺が寄ってます」 「…………だから、何?」 訳もなくイライラしていたのが顔に出てしまっていたのだろう。指摘されついキツい言い方になってしまった。 「室長がピリピリしているので他の監察官の方々が怯えてますよ。」 周りを見れば遠巻きにこちらを窺う者、視線は向けないが神経をこちらに向けている者と、ボクを気にしているのはあきらかだった。 視線を戻すと、だが藤沢管理官は特に気にしてる風ではない。 「…キミは変わらないね」 「私はどんな室長でも受け入れられますから」 いつもの藤沢ポーカーフェイスだが心なしか楽しそうにも見えなくもない。 「少し休憩されてはいかがですか?」 「…そうだね。そうするよ」 ボクはボクの為と言うより監察官室の為に休憩を取る事にした。 休憩室――。 ボクは誰もいない休憩室でタブレットを噛み砕いていた。 精神的な疲れが出ると抑制剤やサプリメント等を摂取してしまう良くない癖が付いていたのだ。 (…疲れと言う訳でもないんだけどね) ただイライラしていた。仕事の事でではない。 仕事中は寧ろ集中しているからそんな事も忘れていられる。 ふとした時に自分のモノとは思えない感情に囚われ、そんな事を思ってしまう自分に戸惑いを感じ、結局イラついてしまうのだ。 『カレニアイタイ』 茨城の髪に触れた日、監察対象に動きがあった。その為あっと言う間に事態が進み、その日のうちに処遇処罰が決まってしまった。 必然、鑑識課に赴く理由もなくなりボクは監察官室に戻る事になった。 急な事でバタついたその日は彼に連絡を取る事も出来ず、数日後、鑑識課に行けば彼はちょうど席を外していて姿を見る事も出来なかった。 (…望月信夫達が茨城の事で騒いでいたけどね。…鑑識課のアイドルって何?) ついムッとして余計な事を言って来てしまった気がする。 「……はあ」 自分で自分の気持ちを持て余していると言うのに、そんなボクの変化にあの人は直ぐ様気づいてしまう。 『最近、何かあったのかね?』 式部副総監。ボクがお世話になった大事な恩人だ。柔和な人柄だが人の機敏に聡くボクは何度も助けて貰った。 (…でも今は聞かれても困るんだよね) まだ何もはっきりしていないのだから。 何故、彼にキスしたのだろう。 何故、彼といると楽しく感じるのだろう。 何故、彼にH型がバレても不安にならないのだろう。 他人が彼に触れるとイヤなのは何故? 会えなくて寂しいと感じるのは何故? 何故? 「……はあ」 ワカラナイ。 大体がボクがこんなに頭を悩ませていると言うのに、茨城の方から何の連絡もないと言うのはどういう事だろう。 (ボクに触れられてあんな顔したくせに…) 「…続き、シたくないって事?」 そう口に出したら、段々腹がたってきた。 ボクは手に持っていたタブレットケースをポッケにしまうと休憩室を後にした。 仮眠室――。 「…まさか本当にいるなんてね」 茨城に文句のひとつでも言ってやろうと彼を思った時、ふと思い付いたのが仮眠室だった。 もしやと思い覗いた一番奥のベッド。 茨城が静かな寝息をたてて眠っていた。 「…本当、よく寝る人だね」 呆れてはいるのだが不思議とイライラしていた感情はなくなった。代わりに嬉しさと胸を締め付けるような想いに満たされていく。 と、同時に感じる欲情。 戸惑いは無かった。寧ろあんなに悩んでいたのが嘘のように彼の顔を見て気持ちがはっきりしていった。 (…ボクは茨城が、好き、なんだ) 彼の頬に手を添えると躊躇う事なく口付ける。 啄むように何度も口付けを落としていると、吐息と共に彼の目が開いた。 「…ふ、ぁ、…はぁ」 彼の目がボクを捉える。 「…え、…都筑?」 ボクだと認識した途端、赤く染まる頬。 「…な、んで…」 「なんで?約束したと思うけど。覚えてないの?」 「……覚えて る」 「ふぅん、そう。でもそうだね。茨城がシたくないなら、シないけど?」 ボクは茨城の反応を楽しむように意地悪く言う。 え?っと驚いた顔をした茨城が困ったように返事をした。 「………シたい、です」 よほど恥ずかしいのか赤らむ顔をシーツで隠そうとする茨城。 「…なに隠れようとしているの?…これ邪魔」 ボクはシーツをひっぺがし、茨城に覆い被さった。 「…あ、 は、…はぁ」 静かな仮眠室にベッドの軋む音と茨城の甘い声が漏れ聞こえる。 「…そんなに、締めない でよ。…今更、止めたり しないよ」 抱きしめるように身体を重ね、茨城のナカをゆっくり押し進めていく。 「…だっ て、…ぁあ、…こ んな…の、…しらな…ぃ」 ボクにしがみつき快楽を逃がそうとする茨城にボクの熱もあがる。 「……う ん。…ボクも だよ」 茨城の頬にキスをし、首筋に顔を埋めると髪から甘い匂いがしてたまらなくなった。 茨城のナカの最奥を穿つ。 「ああぁ…」 とたんにあがる矯声。 ゆっくりと揺さぶりをかければ、茨城の口から絶え間なく喘ぎ声が漏れた。 「…あ、やっ、…つづき、…まっ て」 「…え」 「……おか…しく、…な る、からぁ…」 「……ばかだね、茨城。…そんなの 煽りでしかないよ」 ボクは茨城をきつく抱きしめると揺さぶりを再開し激しく抽送してナカを擦った。 「…あ、はっ、ぁ、ああああああぁ」 「…くっ」 ボクはイク直前にナカから引き抜くと自分のモノと茨城のモノを合わせて握り込む。 二人分の白濁が噴き出し自分達の腹部を汚した…。 衣服を整え、ベッドに横たわったままの茨城に声をかける。 「じゃあボクは1度、監察官室に戻ってから、またこっちに戻って来るから。そしたら寮まで送って行くよ」 「……ん、…よろしく」 「ボク以外に襲われないでよ?」 「…そんな物好き、お前以外いねえよ」 茨城が呆れたように笑い、ボクを見送る。 「……どうだか」 と呟くとボクは急ぎ足で仮眠室をあとにしたのだった…。

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