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【溶け出した苺のヨーグルトアイス】

◆小説用お題ったー。様より ~お題【溶け出した苺のヨーグルトアイス】~  整えられた髪型。  きめ細かい肌。  誰もが一度は振り返るような甘いフェイスは、ニコニコと感じのいい笑みを作っている。  その笑みに、青年と同じ部屋に居る壮年の男は、同性だというのに見惚れてしまいそうだった。  笑みを絶やさず、テーブルの上に肘を立てながら手を組む青年は、まるでモデルのようだ。 「君は、トロフィーマニアかい?」  壮年の男がそう言うと、青年は恥ずかしそうにはにかむ。 「あれっ、見ちゃいました? 最近手入れを怠っていて……やだな。誰かに見せるつもりはなかったのに……っ」  照れた様子の青年は、やはり絵になる。  もっと辱めたいという加虐心と、イケナイことを言ってしまったかのような罪悪感。  男は一度だけ、咳払いをして心を落ち着けた。 「僕、記念日とかを結構気にするんですよね。お揃いの物を買うのも好きだし、デートの記念に形として残るお土産を買ったり……女々しいって、笑いますか?」  男が首を横に振ると、青年は嬉しそうに笑う。  青年の言っていることは、ある意味的外れ。……そしてある意味、男の訊きたいことでもあった。  男は、青年の部屋を脳裏に思い浮かべる。 「あの部屋にあった物は、君にとっての記念品かい?」  はにかみながら、青年は頷いた。  それに対し、男はさらに追求する。 「どうやって手に入れた?」  予想外の問い掛けだったのか、青年は目を丸くした。  気の抜けた表情だというのに、やはり人を惹きつける魅力がある。間抜けな表情を浮かべたまま、青年は答えた。 「見ていたでしょう? スプーンですよ。お兄さんはやったことないんですか?」 「生憎とね」 「勿体無い!」  突如、大きな音が部屋に響く。……青年が、テーブルを叩いた音だ。 「真っ白なアイス──僕はヨーグルトアイスが好きなので、今はそう例えますね? 真っ白なヨーグルトアイスをスプーンでほじくって、底からイチゴソースが溢れてくるあのワクワク感……イメージできます?」  男は、小さく頷く。 「スプーンから、溶けたかのようにトロッと零れ落ちるヨーグルトアイス……あはっ。思い出しただけでドキドキしますねっ」  恍惚とした表情を浮かべた青年は、目の前に居る男を見ているようで……見ていない。 「僕はあの瞬間が大好きなんです。その証拠が【アレ】です」  あまりにも無邪気な笑みに、男は眉間に皺を寄せた。  ──自分が見た物は『ヨーグルトアイス』なんていう、可愛らしい物じゃなかったからだ。  青年の部屋に並んでいた【記念品】を思い出す。  ──片目を抑えて蹲る、大柄の男。  ──スプーンを片手に【記念品】を眺める、青年の姿。  脳裏にその光景を思い浮かべてから、目の前で頬を紅潮させている青年を見つめ直す。  ──その姿は……恋人である男の片目を、スプーンで抉り取った容疑者には……どうしても、見えなかった。  青年の部屋にあった【記念品】という名の、瓶に詰められた目玉を思い出す。  取り調べをしている男は……二度と、ヨーグルトアイスを食べられなさそうだ。 【溶け出した苺のヨーグルトアイス】 了

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