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【世界で一番悲しい夢】
◆思い付きで書いた短編です。
毎日、夢を見た。
素敵な王子様と、綺麗なお姫様が、仲良く手を繋いで、庭園を歩く。……そんな、夢。
毎日毎日繰り返される、二人の逢瀬。
僕はそれを眺める花なのか、鳥なのか……。ただひたすらに、仲睦まじい二人を眺め続けた。
夢の話をすると、君はいつも笑ってこう言うんだ。
『──幸せな夢だね』
笑う君に、僕はいつも……笑顔を、返せなかった。
そんな僕を見て、君はまた笑うんだ。
君はいつだって、素敵な人だった。
笑わない僕を見て、笑ってくれる。
笑えない僕を見て、笑ってくれた。
……だから、言えないんだ。
──夢の中で笑う王子様が『君だ』って。
だからこそ、僕にはどうしても言えないんだ。
──王子様の隣で笑うお姫様が『僕じゃないんだよ』って。
僕は君の目を見て、静かな声で答える。
『──世界で一番、悲しい夢だよ』
涙が出るほど、お似合いな二人は。
……きっと今日も、手を繋いで笑っている。
【世界で一番悲しい夢】 了
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