◆思い付きで書いた短編です。 　君は、思ったことをすぐ、顔に出してしまうタイプの子だった。 　庭で駆け回るのが好きな君は、雨が降ると目に見えて落ち込む。 　けれど、雨上がり。空に架かる虹を見上げて、君は瞳を輝かせるんだ。 　君はいつもそんな調子だから、僕のやることなすこと全てに対して、表情を変えた。 　頭を叩くと悲しんで、宝物を壊すと落ち込んで、仲間外れにすると泣いていたのを、僕は知っている。 　ころころ変わる君の表情が、好きだった。だから僕は、いつも君を虐めていたんだ。 　……いつからか、僕を見つけると君は逃げるようになった。 　僕はそれが腹立たしくて、面白くないものだから……。ある日、君のことをこっそり追いかけてみたんだ。 　──そこで、僕は思わず呟いてしまった。 「──僕は……なにかをどこかで、間違えたの……っ？」 　ころころ変わる君の表情を見るのが好きで、だからこそ虐めていたのに。 　君が、僕の知らない人に向けているその表情は、初めてで……。 　──たぶん、僕が見たかったのは……それだったんだ。 　──君の【笑顔】を見たのは、初めてだったよ。 【間違い】　了