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【アイスと写真と思春期と】 1

◆fujossy様ユーザー企画投稿作品 ★「絵師様アンソロジー夏」7月6日19時公開!★ 【キーワード】 ①夏の匂い ②繋いだ手 ③約束  真夏の、放課後。  俺たちは同じクラスの新聞部部長に、呼び止められていた。 「「──写真を撮らせてほしい?」」  外は、快晴。  うだるような暑さに、騒がしいクラスメイトの喋り声。  そんな中、俺と同時に声を発したのは手稲(ていね)というクラスメイトだ。  俺──手束(てつか)と手稲は、新聞部部長の言葉に小首を傾げる。  ……話は、こうだ。  毎年、この高校の新聞部は長期休暇に入る前、生徒や先生の写真を学校関係者限定で売買している。大事な思い出になるからな、いい話だ。  写真の内容は、休み時間の光景だったり。  イベント──つまり、体育祭や学校祭の光景だったりと、とにかく色々。  生徒や教師が写真を購入し、得たお金は新聞部の部費となる。  ちなみに、予め写真の売買をしていいかは本人に許可を取っているので、そこらへんは問題無いらしい。当然だな。  そして、今現在。  俺と手稲は部費獲得のために売買する写真のモデルとして、声をかけられている。  ……とまぁ、そんな状況だ。 「学校一のモテ男な手稲と、学校一のマスコットな手束のツーショット……絶対売れると思うんだよ!」 「いや、なんだよ『学校一番のマスコットな手束』って!」 「ホラ、よく言うだろ? イケメンが可愛いマスコットを身に着けていると、カッコいいと可愛いのギャップにキュンとくる~みたいな!」 「俺、人間なんだけど!」  どうやら、全く嬉しくない理由でのキャスティングらしい。  手稲は俺と新聞部部長のやり取りを聞きながら、肩を揺らして笑っている。  ……新聞部部長が言う通り、確かに手稲はカッコいい。  ストレートな黒髪に、いつも笑みを浮かべていて優しい性格。  誰かの悪口を言っているところなんて見たことがないし、逆に誰かが手稲の悪口を言っているところすら見たことがない。  俺と背丈はそんなに変わらないはずなのに、オーラのせいなのか……全然、違う人間に見える。  対して俺は、赤っぽい茶髪に手稲より大きい瞳。  よく『子供っぽい』だとかは言われるが、まさか『マスコット』と言われているとは。……別に、悔しくない。予想外だっただけで、全然。……全然、落ち込んでなんかいないからな!  ……コホン! 話を戻そう。  そんな手稲はよく、女子にキャーキャー言われている。  男友達と遊ぶ方が楽しい俺でさえ、女子の黄色い歓声を何度も聞いたことがあるくらいだ。  つまり、相当人気ということなのだろう。  それにしても……写真、写真かぁ……。  キャスティング理由がまったくもって不名誉な肩書きではあるが、友人である新聞部部長の頼みを断るのも気が引ける。  一先ず俺は、手稲を振り返った。 「まぁ、俺は別にいいかなって感じだけど。……手稲は?」 「僕?」  手稲は目元を指で拭いながら、俺の問いに反応する。  ……いや、泣くほど笑ってたのかよ! さすがに心外だぞ、このイケメンめ!  手稲は、ほんの少し考えるような素振りをする。  が、すぐにいつもの笑みを浮かべる。 「僕も、全然いいよ。褒められて悪い気はしないしね」 「出た~! イケメンの余裕~! ど~せ俺は引き立て役のマスコットですよ~!」 「ちょっと、それやめてよ……っ。……ふふっ、ツボなんだから……っ」  大袈裟に肩をすくめてみせると、手稲がまた肩を揺らして笑う。  俺たちのやり取りを見て、新聞部部長も笑っていた。 「ははっ! ……じゃあ、決定ってことでいいんだな! 二人共、バスで帰るんだろう?」  問い掛けに、俺と手稲が頷く。 「じゃあ、撮影場所はバス停にしよう!」  そう言って、新聞部部長はいそいそと帰り支度を始める。  それを見て、俺と手稲も自分の席に戻った。

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