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【ホ別】

◆自分で考えたお題より ~お題【見た目はドストライク】~  ──見た目はドストライク。  可愛くて、どこか品があって……女装が似合いそうな男だった。  目も大きいし、唇だってツヤツヤプルプル。立てられた指も、男のくせに綺麗だ。  ──それでも、しっかりと男。  喉仏はあるし、骨格も男。背だって、百八十センチある俺と少ししか変わらない。  ──だがそれがいい。  男は街ですれ違うとすぐ、俺に近寄ってきた。俺もなんでか避ける気になれなくて、男が近寄って来るのを待ってみたり。  ──まさに、運命的な出会い。  きっと彼は、口を開けば詩的なことを言うに違いない。そんな雰囲気を纏っている。だったら俺も、それ相応の知的さで返してみせよう。  とか思っていたら、相手は開口一番……こう言った。 「──三万でどうだい」  ……。  …………はっ?  指がピンと、三本立てられる。  男は綺麗な顔で笑みを浮かべながら、俺の返事をジッと待っている。 「……すみません、おっしゃる意味が……っ?」  ──まさに、予想外。自分のことを、商品として売り込む男だったとは……。  しかし、それはそれ。オープンビッチ、嫌いじゃないぜ。  思わずつまらない返事をしてしまったが、まだまだ挽回のチャンスはある。俺は気持ちを切り替え、別の一手を打とうと口を開く。  ──が、その前に……言葉をねじ込まれた。 「──少ないか。なら、五万出そう」 「んんんっ?」  パッと開かれた片手は、なかなかに俺好みな形状。  しかし、なんだか……オープンビッチとは少し違うような?  ──まるで……俺を【買おう】としているようなセリフじゃないか……っ? 「ビビッときたんだ。どうだい、五万でワンナイト」 「え、あ~、えっ?」 「安心したまえ。当然、ホ別だ」  ホテル代は別──略して【ホ別】という専門用語を使われてしまった。  ──なんだ、この……オッサンみたいな麗人は? 「まだ少ないか? 君は随分と業突張り──」 「あのっ!」 「なんだい? ……さっきから可愛い顔をゆがませて、どうしたんだい?」  可愛い? 俺が? 百八十センチ超えの身長と短く刈り上げた髪型で? 口と耳にピアスを付けてる俺が?  ……か、可愛い、って……っ? 「あぁ、いいね。その髪型だと、耳が赤くなったらすぐに分かる」 「うっ、え……えぇ……っ?」 「うん。……君はとても、可愛いね」  男は思ったことをズバズバと口にして、俺を見上げている。  ニコニコと品のいい笑みを浮かべながら、無邪気なようで妖艶な表情。  ──だけど……コイツは、男だ。 「──さぁ、可愛い坊や。……七万でどうだい」  さりげなく値上げされているが、俺は首を横に振る。  男が『どうして』と言う前に、覇気の無い声で答えた。 「…………っ、お金っ、要らないッス……っ」  見た目が超ドストライクな、美人すぎる麗人。  言動はオッサンだし、正直男を見る目もないような……そんな、残念すぎるイケメン。  ──そんなコイツは数時間後、俺の初めてを奪うと同時に。  ──俺の恋人になる男らしい。 【ホ別】 了

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