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【自称・後天性】

◆自分で考えたお題より ~お題【後 or 先】~  ──『バンッ!』と、扉が突然、勢いよく開かれる。 「兄さんッ! 兄さぁあんッ! 大変だ大変だ大変だぁあッ!」  そう言いながら、一人の高校生がリビングに現れた。  兄さんと呼ばれた青年は、そんな高校生に視線を向ける。……青年はわざわざ『なにが大変なんだ』とは、言わない。  ──言わなくても、少年が語り始めるからだ。 「──朝起きたら、生えてたッ!」  少年はそう言い、自身の下半身を両手の人差し指で指す。  青年はコーヒーを啜った後、少年がズボンの上から指す下半身を見た。 「どうしよう……ッ! こんな、こんなことって本当にあるんだ……ッ! やべェよ兄さんッ! 俺、俺……ッ! 今日から、男だよッ!」  喚きながら、少年は床に膝をつく。 「こんなんじゃ……好きな人に『好き』って言えないよぉおッ!」  悲観ぶる少年を見下ろし、青年は椅子に座ったままコーヒーを啜る。……わざとらしく『ズズッ』という音をたてて。 「……オイ」 「なに、兄さん……ッ! 今、メチャクチャ絶望してるんだけど……ッ!」 「お前、俺のこと好きじゃないの」  少年は目を丸くして、顔を上げる。 「えっ、メッチャ好き。世界で一番好き。昨日もベッドで『好き』って死ぬほど言ったじゃん。好き」 「好きな人に『好き』って言えてんじゃねェか」  コーヒーカップをテーブルの上に置いた後、青年は頬杖をついた。  少年は『やっちまったぜ』と言いたげに、舌をペロッと出す。  わざとらしいほど落ち込んでいたのは、なんだったのか……。青年は、ニコニコと笑う少年を眺めた。 「……なぁ。俺たちさ……昨日、ベッドでいろいろシたよな」 「シたッ! すっげー良かったッ! 兄さんマジでテクニシャンッ!」 「それはどうも。……でさ、俺は昨日の光景をありありと思い出せるんだよ」 「同じだな、兄さんッ! こっちもありありと思い出せるッ!」  少年は立ち上がり、青年とテーブルを挟んで正面にある椅子へ座る。  ピカピカのスマイルを浮かべる少年に、青年は頬杖をつきながら……冷ややかな視線を送った。 「──じゃあ、サクッと核心つくけどよ。……お前、元から生えてたぞ」  青年の冷めた視線に、少年は笑みで応える。 「……後天性男体化って、萌えっかな~ってッ!」 「むしろ俺は先天性男体じゃないと燃えねェ」 「……なんか漢字違くない? 気のせい?」 「そうだな、気のせいだな」  青年の言葉を聴き、少年は「そっか~ッ!」と言いながら、テーブルに並べられた朝食に箸を伸ばした。  正直、この愚弟が【後天性】という言葉を知っていたことに、青年は驚いている。  ……が、わざわざ口に出すことではないと思い、青年は朝食を嬉しそうに頬張る弟を眺めた。 【自称・後天性】 了

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