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【コンコルドの誤り】

◆自分で考えたお題より ~お題【勘違いしたけれど】~  ──僕は、君が好きだ。  出会ったあの日、初めて会話をして……。それから意気投合して、ずっと、ずっと。  僕は君が好きで、君も僕を好きだった。  僕たちは趣味も同じで、なんでも話が合って。嫌いなものも尊重し合える、いい関係だったと思う。  だからこそ、僕たちはお互いを唯一無二の存在だと思った。  想われているのを知っていたし、僕が想っているのを相手も知っていたと思う。  ──幸せだった。  贅沢なくらい、凄く、凄く。  毎日が、充実していた。  ──それがおかしくなったのは、本当に最近。  前まで、君はキラキラ光っていて……君の言動を多少のことなら、なんだって受け入れられていた。  むしろ『君だからオッケー』という気持ちを、抱いていたのだと思う。  ──だけど確かに、少しずつ……変わっていったのだ。  君は突然……僕の好きな物を、少しずつ否定するようになった。  君の好きな物を『イヤだ』と思った僕自身に気付き始めたのも……その頃。  どこで狂ってしまったのかは……正直に言うと、分からない。  ただ分かるのは……同じ目標を持っていたはずの君が、僕を妬み始めているということ。  ──そして僕も、君を……妬み始めている。 「お前って、凄いよな。この前の大会もすげぇ成績残してたじゃん」  部活が終わった後、君は僕にそう声をかけてきた。  僕はタオルで汗を拭きながら、曖昧に笑う。……その大会で、僕は君に勝ってしまったから。 「君だって、凄いよ。先生から期待されている。……先生だけじゃなくて、部活のメンバーからも……」 「そんなことねェって。お前の方が凄いよ」 「そんなことないよ」 「それこそ、そんなことねェって」  いつからか……君との会話が、息苦しい。  家で一人になって、目を閉じて考える。  ──僕は君のことが好きだったのに……君のことを考えると、全然楽しくない。  ──僕は、君のどこが好きだったのだろう。  目を閉じて、考えて……そこでようやく、僕は気付いた。 「……そ、っか」  気付くと同時に、泣き出しそうになる。  情けない声が、漏れ出た。  ──僕は【君】が好きだったわけじゃない。  ──僕は【僕を好きな君】が好きだったのだ。  それはきっと……僕だけじゃ、ない。  ──君もまた【君を好きな僕】が、好きだったのかな? 「……ご、めん。……ごめ、ん……っ」  『好きだよ』と、僕たちは声に出したりしなかった。だけど確かに……伝わっていたとは、思う。  だからハッキリと、僕たちは分かっている。  ──お互いに、お互いを、もう……好きじゃないってことを。  僕たちは、勘違いした。  勘違い……した、けれど。 「【好き】の気持ちを……嘘にしたく、ないよ……っ」  国語の教科書に【コンコルドの誤り】って言葉が、あったっけ。  だったらきっと……僕たちは、これからも【好き同士】だ。 【コンコルドの誤り】 了

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