27 / 62
【隣の席に座る、クラスメイト】
◆思い付きで書いた短編です。
隣の席に座る、クラスメイト。
ソイツはいつも……僕に、話しかけてくる。
「いっつもスマホでなに見てるの?」
スマホを眺める僕の顔を眺めながら、ソイツは笑みを浮かべた。
僕はスマホから目を逸らさず、相手に目を向けないまま、返事をする。
「BL小説」
「え、マジで?」
「マジで」
「ちなみに、どういう内容?」
絶対に興味なんかないはずなのに、ソイツは笑みを浮かべ続けていた。
だからちょっとだけ、いじわるする。
「興味ないでしょ。僕は、好きなものを【なんとなく】で訊かれたくない」
「興味あるよ」
「BLなんか、好きじゃないくせに?」
──その瞬間。
──『ガタンッ』と、机が揺れた。
「……好きな人の好きなものなら、興味ないわけ、ない」
隣の席に座ったまま、僕の机を掴んだらしい。
机を掴んだまま、ソイツは腕を揺らす。そうすると、僕が腕を載せている机も、グラグラと揺れた。
「怒った?」
スマホから視線を外し、隣の席を眺める。
ソイツはムッとした表情を浮かべた後、自分の席に突っ伏した。
「……拗ねた。現在進行形で」
「それは、BLに興味ないって僕が決めつけたから?」
数回、机が揺れる。
「…………俺がどれだけ、お前のことを好きか知ってるくせに……分かってないフリをされたから」
「困った恋人もいたもんだ」
「許せそうにない……」
「嫌いになっちゃった?」
僕は、僕の机を揺らそうとするその手に……触れてみた。ソイツはそっと顔を上げて、重ねられた手を見る。
そして……僕の顔を、見た。
「……好き。現在進行形で」
「良かったね。……両想いみたいだよ」
「今、もっと好きになった」
「両想いなのも現在進行形らしいよ」
スマホを机の上に置いて、僕は机に突っ伏すソイツを見る。目が合うと、ソイツは照れ臭そうに笑った。
隣の席に座る、クラスメイト。
──それが僕の【友達】だとは、言っていないでしょ?
【隣の席に座る、クラスメイト】 了
ともだちにシェアしよう!