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【隣の席に座る、クラスメイト】

◆思い付きで書いた短編です。  隣の席に座る、クラスメイト。  ソイツはいつも……僕に、話しかけてくる。 「いっつもスマホでなに見てるの?」  スマホを眺める僕の顔を眺めながら、ソイツは笑みを浮かべた。  僕はスマホから目を逸らさず、相手に目を向けないまま、返事をする。 「BL小説」 「え、マジで?」 「マジで」 「ちなみに、どういう内容?」  絶対に興味なんかないはずなのに、ソイツは笑みを浮かべ続けていた。  だからちょっとだけ、いじわるする。 「興味ないでしょ。僕は、好きなものを【なんとなく】で訊かれたくない」 「興味あるよ」 「BLなんか、好きじゃないくせに?」  ──その瞬間。  ──『ガタンッ』と、机が揺れた。 「……好きな人の好きなものなら、興味ないわけ、ない」  隣の席に座ったまま、僕の机を掴んだらしい。  机を掴んだまま、ソイツは腕を揺らす。そうすると、僕が腕を載せている机も、グラグラと揺れた。 「怒った?」  スマホから視線を外し、隣の席を眺める。  ソイツはムッとした表情を浮かべた後、自分の席に突っ伏した。 「……拗ねた。現在進行形で」 「それは、BLに興味ないって僕が決めつけたから?」  数回、机が揺れる。 「…………俺がどれだけ、お前のことを好きか知ってるくせに……分かってないフリをされたから」 「困った恋人もいたもんだ」 「許せそうにない……」 「嫌いになっちゃった?」  僕は、僕の机を揺らそうとするその手に……触れてみた。ソイツはそっと顔を上げて、重ねられた手を見る。  そして……僕の顔を、見た。 「……好き。現在進行形で」 「良かったね。……両想いみたいだよ」 「今、もっと好きになった」 「両想いなのも現在進行形らしいよ」  スマホを机の上に置いて、僕は机に突っ伏すソイツを見る。目が合うと、ソイツは照れ臭そうに笑った。  隣の席に座る、クラスメイト。  ──それが僕の【友達】だとは、言っていないでしょ? 【隣の席に座る、クラスメイト】 了

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