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【クリスマスプレゼント】 前編

◆いつぞやに書いた短編です。  ──唐突だが、今年も俺の家にサンタがやってきた。 「メリークリスマス!」  白いヒゲもなければ、腹回りにムダな脂肪もない。  サンタらしい装いと言えば、上下赤い服と大きな白い袋。  そして、お家芸とも呼べる不法侵入だけ。 「……帰ってくれます?」  椅子に座って机に向き合い、職場で処理し切れなかった書類を睨んでいた俺は、声がした方をゆっくりと振り返る。 「ツレないなぁ? せっかくのクリスマスなのに」  不法侵入者──もとい、サンタは唇を尖らせ、ベランダから勝手に俺の部屋に入ってきた。……なるほど。一応、靴は脱いでいるようだ。 「サンタ、俺も暇じゃないんですけど……」 「まぁまぁ! ……いつも仕事を頑張っている君に、サンタさんからのプレゼントだよっ!」  頼んでいない。  あと、俺はもうそんな歳ではないのだ。  どうして、毎年この男はクリスマスの日にやってくるのだろうか。  自身を『サンタ』と名乗り、当然のように部屋にやってきて、当然のようにプレゼントを渡してきて。……忍んでいないところを除けば、本当にサンタのようだ。 「今年でいくつだっけ?」 「……二十七」  そう。  二十七の男のところにやってくるサンタクロースなんて、明らかにおかしいだろう。 「知ってた知ってた! だからこそ、今年のプレゼントは悩んだよ~? 年齢にちなんで、ツナ缶にしようかとも思っちゃった」 「プレゼントとか要らないので帰って下さい」 「ほんっっっとにツレない!」  サンタは座り込んで、仕事をしている俺のために、大きな袋からゴソゴソとプレゼントを探している。  ……うん。頼んでいない、本当に。 「だいたい、どうして毎年俺のところに来るんですか? 子供じゃありませんし、大前提として……あなた、怪しすぎです」  至極当然の問いにも、サンタは笑顔で応対した。 「サンタってのは怪しいもんだろ?」 「消えて下さい」  どうしてこの、自身を『サンタ』と名乗る男は毎年毎年……俺の心をかき乱すのだろうか。  年に一回だけ現れて、他愛も無い雑談をした後、妙にこじゃれたプレゼントを置いて、消えていく。  本名も年齢も不明な、謎の男。胡散臭い笑みを浮かべて、俺を愛おしそうに眺めて……本当に、意味不明。  ……それが、毎年の感想。けれど、今年は少し違う。  ──どうして俺はこんな男に、プレゼントなんて用意しているのだろうか。  俺は今年、初めて……サンタと名乗る怪しすぎる男に、プレゼントを用意したのだ。  来ない可能性だって、十分にあった。けれど、気の迷いと言うか……このプレゼントを店で見つけたとき、思わず考えてしまったのだ。  ──サンタに似合いそうだな、と。  思わずサンタを見つめると、怪訝そうな表情が返ってきた。 「ん? なになに? どうしたの? そんなに見つめてきて~」 「いえ、なにも」  だが……いざ渡すとなると、照れ臭いものだ。

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