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【ヒーローになれないお姫様】

◆思い付きで書いた短編です。  ウサギのぬいぐるみ。  キレイなリボン。  フリフリのお洋服。  ピンク色、ハート柄、フリルにレース。  キラキラでふわふわの、夢の国。  物心ついた頃から、ボクの周りは【可愛い】が当たり前。  与えられた物も、目に入った物も全部。ボクは、素直に『可愛い』と思った。  どれも、凄くすごく、可愛い。  ……でも。  ──全部、カッコよくは……ない。 「むくれた顔をしているキミも、可愛いなぁ……っ?」  そう言いながら、オジサンはピカピカのティアラをくれた。  ……王冠じゃなくて、ティアラ。  お姫様になんか、なりたくない。  ただ囲われるだけの、守られるだけの存在には……絶対に。  だからボクは、ティアラをオジサンに投げつける。 「おてんばだね」  オジサンは笑いながら、ティアラを手で受け止めた。  そのまま、オジサンがボクに近寄る。 「キミは、両親に捨てられた可哀想な子なんだ。……だから、オジサンが守ってあげなくちゃいけない。……そうでしょう?」  ティアラが、頭に載せられた。  きっと今のボクは……凄く、凄く、可愛い。  可愛くなんて、なりたくない。  ──お姫様よりも、王子様になりたいのに……っ。 「本当に……キミは、ボクの娘にそっくりだ。……あぁ、本当に、本当に……可愛いなぁ?」  力強くボクを抱き締めて、オジサンはすすり泣く。  ただ守られるだけの、お姫様。  ……でも、それじゃあダメ。 「……泣かないで、オジサン」  か弱くて、頼りなくて。ただ可愛いだけのボクじゃ、ダメなんだ。  だって……それじゃあどんなに頑張っても、泣いているオジサンを助けられない。  ──お姫様は、ヒーローじゃないから。 【ヒーローになれないお姫様】 了

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