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【可愛い少年がガラの悪い同級生に言い寄るだけの話】
◆思い付きで書いた短編です。
内気な少年は。
ひとりの同級生に、深々と頭を下げていた。
「──俺の写真が撮りたいって?」
同級生は驚きで目を見開き、少年を見つめている。
真っ赤になった少年は、スマホをギュッと握り締めたまま、何度何度も必死になって、コクコクと頷いた。
同級生は頭を掻き、唸り始める。
「いや、あぁ~……? うっ、うぅ~ん……っ? ……そういうの、俺のガラじゃねェんだけど……っ?」
「……しっ、知って、ます……っ」
「だよなぁ~っ?」
それでも、少年は諦めるような素振りを見せない。スマホを握り締めたまま、同級生からの『イエス』を待っていた。
だが、普段から自分の写真を撮ったりしない同級生からすると、この頼みはちょっとしたバツゲームのような感覚だ。
「あー、のさ? 参考までに、ちょっくら訊きたいんだけどよ? なんで、俺の写真が欲しいんだ?」
「……っ」
「いや、真っ赤になって俯かれても分かんねぇって」
少年は俯き、モジモジと恥ずかしがる。
だが、この問いに答えないと目的は決して果たされない。そこまで分かっている少年は、真っ暗になっているスマホの画面を同級生へと向けた。
「……お、おまじない……が、したくて……っ」
「はぁ? 俺相手で『おまじない』だ?」
「……っ」
少年は、もう一度頷く。
【おまじない】なんてものは、ますます同級生のガラではない。それでも、少年は見た目と態度によらず……引かなかった。
それどころか、大胆な発言をかましたのだ。
「──すっ、好きな人の写真を……待ち受けに、すると……両想いになれる、おまじない……です、っ」
「…………はっ?」
「すっ、すみません……っ」
同級生は、あんぐりと口を開ける。
俯く少年が、冗談を言っているようには見えない。ましてや……自分のことを茶化す目的のようにも、見えなかった。
だからこそ、同級生は戸惑ったのだ。
「……なぁ、オイ。それは、よ……?」
俯いたままの少年に、手を伸ばす。
そして、同級生はおもむろに……。
「──それって……【恋人同士の俺たち】にも、必要なおまじないなのか?」
そう言って、少年の頭を撫でた。
頭を撫でられた少年は、畏縮する。
「……もっと、僕のことを……好きに、なって……もらいたい、です……っ」
「俺、相当お前のこと好きなつもりなんだけど。……これ以上好きになったら、俺……お前のストーカーになるぞ?」
「よっ、よろしくお願いします……っ!」
「いや、それはよろしくしたらダメだろーが」
少年──恋人が自分にベタ惚れなことを、同級生は知っていた。
だが、まさか……ここまでだったとは。
「はぁ……っ。せめて、一緒に撮るとか……そういう折衷案じゃ、ダメか?」
写真を撮るのは、どうしても乗り気になれない。だが、可愛い恋人の願いを叶えたいのも、同級生にとっては本心だった。
絞り出した折衷案兼妥協案を聞いて、少年は首を……。
「──そっ、それじゃあ……おまじない、できません……っ!」
縦にではなく、ふるふると横に振った。
──あぁ、マジかよ。
──変なところでコイツ、強情なんだよなぁ……。
同級生は頭を掻いて、どうしたものかと考え込んだ。
【可愛い少年がガラの悪い同級生に言い寄るだけの話】 了
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