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【夜空を見上げて、ふたり】
◆思い付きで書いた短編です。
夜空を見上げて、少年は。
「──星に祈る僕を、子供っぽいと……あなたは、笑いますか?」
そう言い、はにかんだ。
少年と共に草原に寝転んだ青年は、つまらなさそうに答える。
「別に。テメェが流れ星を探してようが、ひとりでブチブチ花占いしてようが、俺には関係ねェよ」
「それは……また少し、寂しいような……。……ほんの少しでもいいので、関心を向けられたいです……っ」
「別に『無関心だ』とは言ってないだろ。他の奴相手ならガッツリ引くしな」
草原に寝転がる少年は、夜空を見上げたままだ。
「……流れ星。なかなか、見当たりませんね」
「だから【願いが叶う】なんて迷信があるんだろ」
「夢がないですね……。あなたらしいとは思いますけど」
「うるせェ」
少年は、星々の輝きから目を逸らさない。そんな少年の横顔を、青年は覗き見た。
浮世離れしたその容姿に、瞳が奪われる。
すると……少年が、目を丸くした。
「あ……っ。……さすがに、速い……ですね」
どうやら、流れ星を見つけたらしい。
だが……願いを込めるには、その流れは速すぎたようだ。
目に見えて落ち込む少年を見て、青年は訊ねる。
「こんな寒い日に、わざわざ天体観測したがるなんてよ? そうまでして叶えたいテメェの願いってのは、いったいなんなんだ?」
少年は未だに、夜空を眺めたままだ。
だが、きちんと青年の声を聴いている。
その証拠に。
「──好きな人と、結ばれますように……と」
少年は、青年の問いかけに。……素直な答えを、返したのだから。
「あなたと、結ばれたいのです。……ですが、まだ僕には……そんな資格が、ありません。魅力も足りなければ、お店をひとつ経営しているあなたに釣り合う男でも、ありません。だから、せめて……到底不可能だと思われている【流れ星に願いを乗せる】という行為を果たすことができれば、あるいは……と」
静かな、声色。
それなのにそのセリフは……どこまでも、情熱的で。
青年は少年に倣い、夜空を見上げる。
「……そうかよ。なら、好きにしろ」
「はい。待っていてくださいね」
少年が口角を上げると同時に、星が……キラリと、瞬く。
流れ星を求める少年は、目を凝らした。
──わざわざ、そんなことをしなくたって。
──祈る必要なんざ、ないってのに……。
青年は、少年の手を握ろうとして。
……そのまま、土の感触を楽しむことしかできない。
「こうして、あなたと星を眺められるだなんて……贅沢な夜ですね」
そう呟く、少年の方が。
「……そうだな」
たった数センチの隙間を埋めることすらできない青年よりも、強く。
……立派な男に、見えた気がした。
【夜空を見上げて、ふたり】 了
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