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3︰奏の正体
2人でテレビを見ながら、俺は奏の今後について考えた。これからどうしたものか…連休中はいいとして、他の日はしょっちゅう部屋に置いておけない。俺も学校がある。さて、どうしようか…。そんな事を真面目に考えていると不意に奏がこちらを向き、考えを見透かした様に話した。
『大丈夫……ですよ?僕ならいつも1人ですし、慣れてますから』
「えっ、そういう訳にはいかないよ。」
俺は必死で、そんなのは駄目だと言った。だが、どうしてそこまでムキになるのか自分も分からなかった。奏の言うように気が付かなかった振りをすれば、今までどおりに過ごせる。それも、1ヶ月すれば留学は終わるのだ。だが、俺の中の何かが出来ないと言っているようでどうしてもその選択肢は取れなかった。かと言って具体案がある訳でもなく、暫く2人の間に沈黙が流れた。それを壊したのは、2人交互になったお腹の音だった。時計を見ると午後の7時。もう夕飯の時間だったので、奏に何を食べたい?と聞いてみた。だが、奏は不思議そうに首を傾げるだけだった。俺はもう1度聞いてみた。
「ご飯、どうする?何食べたい?俺、大抵のものは作れるよ?」
『…えっと、いつものパン?』
「いつものパンって何?」
『…あれだよ?』
聞いてみると、奏は立ち上がり台所にある食パンを指差した。そして、いつもそれを1枚朝夕で貰うと言われた。俺にはキチンとした食事が出されていただけに、その話はショックを受けた。そして、それが差別なんだと理解した。俺は、優しく微笑むと座ってるように言いオムライスを作り始めた。冷蔵庫の材料を見ると丁度作れそうだったからだ。テキパキと材料を切り、炒めているとすぐに台所にはいい匂いが。隣には興味津々で見つめている奏の姿があった。余程嬉しいのか、目が輝いていた。皿に盛ると、ゆっくり運ぶように言いもたせてから自分のを盛り付けて運んだ。食卓はいつもより静かなものの、俺としては嬉しそうにたくさん食べていく奏を見れてとても満足だった。食事が終わると、俺は思い切って奏のことについて聞いてみることにした。
「なぁ奏。さっき偶然お前の布団から薬を見つけたんだけど……もしかして奏はΩ?」
『……!!
お、Ω…です…ごめんなさいごめんなさい、叩かないで…』
「えっ、叩いたりしないよ。Ωだって、βだっていいじゃないか。差別する方がいけないんだから。ちなみに俺はαだし…?」
『……α!ほ、本当に…』
奏はΩである事で相当文句を言われ、差別を受けてきたらしく知られた俺に他の人と同じ様に叩かれるのではと震え、ビクビクしていた。そんな奏に叩いたりしないと教え、敢えて自分の種類も教えた。奏は俺がαとしると、珍しいものを見るかのようにじっと見つめていた。初めて見たのだろう。そして、手を握っている俺にボソりと言った。
『…どうしていきなり襲わないの…?αとなら番になれるし子どもも産めるのに何で』
「番になるのなら、きちんと愛し合いたい。大事にしたいんだ」
いきなり襲わない事が凄く不思議らしく、何度説明しても奏は理解しなかった。αはいつでもΩを襲うと思っているらしかった。そんな事は無いと教えつつ夕飯の片付けを終わると俺は自室に奏を連れて行った。奏には納屋以外は初めての場所なのだろう。とても楽しそうにウロウロとした後、俺のベットに腰掛けた。その時ホストファミリーから電話がかかった為、俺は携帯を片手に下に降りて電話に出た。
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