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5:デート

数時間後、奏は漸く目を覚ました。起き上がろうとするものの腰の痛みからすぐに横になってしまった。俺は優しく頭を撫でてやると、リビングへと連れていった。寝ているうちに、こっそりとシャワーにいれて服を着替えさせておいたのだ。ソファーに横にしてしまうと、朝ご飯を作るために俺は台所に行った。何時も出されるような、パンにジャム、そして牛乳。寂しいかと思ったのでスクランブルエッグもつけた。それを机の上に並べ、奏を連れてくると昨日と同じ様に奏は驚いていた。新鮮なのだろう、とても楽しそうに食べていた。ゆっくり自分のを食べながら、改めて今からどうするか考え始めた。電話によると、ホストファミリーは早めに戻ると言っていた。つまり出かけるなら今日という事になるが、奏は疲れているので無理そうだ。だがこれを逃したら出かけられないかもしれない……。1人ウンウンと唸っていると流石に不信感を持ったのか、奏に言われてしまった。 『……あの…… また僕の事ですか……?』 「えっ?いやいや、違うよ?そんなことないよ? 決してどっかいきたいとかそんなんじゃ……」 『……行きたいです。どっか。』 否定するつもりが、口からスラスラと出てくる肯定の言葉に奏はクスッと笑った。焦る俺をよそに、どこかに行こう、と言ってくれたのである。助かったと思いながら、2人でどこに行こうかと話しあった結果近所の公園という無難な場所に収まった。片付け、支度をしていると不意に奏が呟いた。 『……デートみたい。嬉しい』 まさかそんな事を言われるとは思わず、赤くなる俺。それを見て、つられて赤くなる奏。2人ともそういう経験がなかった。デートか、と思いながら家を出てゆっくり歩いた。誰もいない裏道を、こっそりと手を繋いで歩いた。何も言われない、結構嬉しかった。

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