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004 君が使える手札の一つ1-2
「陛下以外の誰もフォルクハルトのおこないを表立って咎めません」
「表立って、なるほど。堕落させて傀儡を作りたかったのか。私腹を肥やしたいだけの連中は、私が王であることに未だに反発をしている。フォルを手懐けたがる相手が出てくるのは仕方がない」
「王家に反逆の意思を持つ者は潰していったのですが、自分の友人に圧力をかけたとフォルクハルトが騒いだことがあります」
自分を陰で馬鹿にしていた人間を庇うのは、心が広いのか。
あるいは目の前に証拠を積まれても認められない弱さなのか。
「フォルクハルトには一切知らせずに処理すべきでした」
「バカ息子が悪かったとしか言えない自分が不甲斐ない。苦労を掛けたね」
陛下が親として個人的に話をしたところで「それは命令ですか?」とツンツンしていた反抗期なフォルクにはどうしようもない。信頼できる友人に恵まれていたカールに比べると華やかな雰囲気に反してフォルクは孤独だったのかもしれない。
「同い年であっても、義母の立場にいる人間からの苦言を無視するほど愚かでもない。……後妻の件は、君が使える手札の一つとして、考えておいてくれればいい」
侯爵家の人間で王子の婚約者よりも現王妃の発言力は大きい。影響力だってある。
陛下は本当に息子思いの愛情深いお方だ。
使えるものは何でも使えとおっしゃっている。
感動している俺の手を取り、軽く唇を押し当てる。
唇以外の口づけは、祝福だという。
いつでも俺を案じているという意思表示だ。
約束の際や旅立つ相手にすることが多い。
フォルクには嫌がられたので、あまりしたことがない。
「本当なら、暗殺者の件でユースティティア嬢の話を聞きたいところだが時間がないね」
「ええ、これ以上は、周囲も彼らも限界です」
怪しまれてはいけない偶然の出会いを装った理由。
俺と妹を王子たちの婚約者にするという話ではない。
ユーティの話だ。
これは人払いがされていないと難しい。
「よく見ているし、気が付く、最高の相手だと思うのに……婚約解消とは、もったいない」
頭を抱えて嘆くような陛下に申し訳なくなる。
近づいてきたユーティとカールが同時に首をかしげる。
三人でじっくり庭園を見てもそこまで時間は潰せない。
陛下がいくら察しが良くても十年間の話を語りつくせるはずもない。
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