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010 自分の仕事に誇りを持っている1-4

  「お、おにいさま……あの、お身体は」  聞き難そうなユーティに「問題ないよ」と微笑みかける。 「アロイスが居てくれると助かるんだよ。彼は口当たりがいい悪酔いする酒も毒に分類して弾いてくれる。酔うにしてもほろ酔いで翌日に尾を引かない量に調整してくれる。健康を損ねないように酒の量を調整するのは、経験がないと難しいものだ」  そして、俺の場合は酔い潰れたり、二日酔いなど経験するわけにもいかない。隙を見せられる立場じゃない。  まったく飲めないと社交の席で恥をかくので、ある程度は慣れておかなければいけない。  俺がどれだけ飲めるのか、陛下が見極めるために協力してくれとおっしゃってくれたこともある。  だが、陛下に醜態を見せるわけにもいかない。 「なるほど。アロイスのゆうしゅうさ、とても理解できました」    キリっとした顔でユーティがアロイスの必要性を納得してくれた。   「おにいさまの貞操をまもるのは、とても、たいせつなことです」    ユーティが真剣だからこそ、なんだか微笑ましさがある。   「ありがとう、ユーティ。俺がユーティを助けるようにユーティも俺を助けてくれ」 「もちろんです! ゾフィーお姉さまと仲良くなるとアロイスを引き入れやすくなりますか?」 「どうだろうね。彼女は歌姫としての活動を心の底で望みながら、アロイスのために商会の姫君を演じることになるのかもしれない」    アロイスの穴を埋めるためにゾフィアが奮闘する様子を覚えている。  彼女は納得していたかもしれないが、未練はあっただろう。   「歌姫、とは、……歌うことで、おかねをもらう人ですか?」 「そうだね。吟遊詩人とはまた違っている。あれは歴史の語り手であり、噂の根源だ」 「飲み屋?」 「そういったところで歌うことで彼女の気持ちがおさまるのならいいかもしれない。けれど、ゾフィアはもっと多くの人間に自分の歌を届けたいのさ。以前、彼女への罪滅ぼしとしてアロイスの主人として、席を設けたけれど」 「怒らせてしまった?」    女性の気持ちというのは分からない。  あの場面での失敗は、歌を聴く気がない人間が居たことだろう。  彼女の自尊心を傷つけてしまった。   「ゾフィーお姉さまのことは、いったん、わたくしにおあずけください」 「いい案があるのかい?」 「……はい。おにいさまは、ちかく、領地に戻られるのでしょう?」 「ある程度、味方を増やしてからになるね。敵対組織の規模も動きも分かっているから、さっさと排除するよ」    ミーデルガム家の茶会のあとに待っているのは、同年代の貴族連中との顔合わせだ。  呼び出されて三十分前後、子供だけで話をしたり、庭の自慢を聞く。  王都にいる大体の貴族の顔と性格を把握したので、親子の比較という観点で報告書を作って父に提出した。  おもしろかったのか父が陛下に渡したことで、個人的に話を聞きたいと呼び出された。    十年前のことなので、どんな報告書なのか覚えていないが「容赦がない正しい目線だ」と陛下から評価いただいた。  貴族の子息との接触は不要かと思ったが、今回は違った視点からの報告書を作ってみるのもいいかもしれない。

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