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014 俺がやるしかない1-1
アロイスとゾフィアとの接触の後。
特に問題もなく王都にあるプロセチア家の屋敷についた。
眠っていたユーティを起こして、馬車から降りると怒っていますという顔を作ったティメオがいた。
執事として予定にない寄り道は心配をかけただろう。
とくにティメオはユーティが戻ってきたことを知っている。
時間を戻したユーティの発言からプロセチア家に危険が迫っていることを知っている。
それなのに王宮からまっすぐに帰ってこなかった俺は、危機感が足りないように見えただろう。
ユーティを部屋に送り届けてからが本番だ。
メッツィラ商会で買い込んだ焼き菓子は日持ちする。
ユーティのおやつとして、好きに食べられるように持たせる。
飲み物への警戒心が高いので、傷みにくい果物をいくつか見繕っている。
どうしても欲しくなったら自分で井戸から水をくんだり、誰かに水を用意させるだろう。
水を用意させて異味や異臭があったなら、用意した人間はお粗末すぎる。
無味無臭であるはずの水に毒を入れるような間抜けな暗殺者はいない。
ともかく、水の中に果物を入れて香りや甘さを加えるのは、茶葉が手に入りにくい地域の庶民なら誰もがやっている。
そのまま食べるには味も匂いも微妙な果物が水に入れるとおいしい水に変わるのはよくある話だ。
ともかく、メッツィラ商会から帰ってきてユーティは早速ひきこもった。
誰も近寄らないように使用人たちに言い含めておく。
夕飯までユーティは出てこないだろう。
これは以前の時からそうだった。
鍵をかけた部屋の中でユーティが何を思っていたのか、俺は想像していなかった。
不安は当然あっただろう。
自分や家族が狙われているという実感がユーティにはある。
以前の俺は自分なりに精一杯に対処していたとはいえ、ユーティの抱いていた不安や恐怖に寄り添っていたとは言えない。
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