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021 人はいつだって選択を迫られる1-2
二枚舌という批難は甘んじて受け入れよう。
行動する陛下と行動されないユスおじさまの両方を俺は尊敬して、擁護した。
意見が一貫していないと言われても否定はできない。
そう思いながらも、この世界でフォルクハルトと陛下を擁護する会話をしていない俺としては戸惑うしかない。
これはどういうことだろう。
あまりにも早すぎる。
フォルクハルトを見つめると敵意の瞳から一転して、困惑の顔になっている。
自分の感情に、感覚に、記憶に、心当たりがないのだろう。
振り回されている自覚すらないのかもしれない。
彼がユスおじさまを悪く言うのは、不思議ではない。
見た目で物事を判断しがちだと知っている。
フォルクハルトの性質をわかっていながら、聞き流せなかった。
これは生きているユスおじさまと会話したことで芽生えた俺の中の感傷が原因だろうか。
あるいは当時の苛立ちの再来か。
ユスおじさまが亡くなった後、いわれのない嫌疑が俺にかかった。
陛下も父も身を隠して、やり過ごすように言われたが、不名誉なレッテルを貼られたままではいられない。
第一王子の婚約者が容疑者であっていいはずがない。
自分の正義を示すためには、真実を追求する必要があった。
プロセチア家を狙う組織の全貌もおぼろげにしか分かっていなかった時期だからこそ、おかしな状況を放置できない。十七年間の人生で十歳前後のあのころが一番苦労した。
結果として数々の不正と悪事と罪と死と向かい合わなければならなくなったが、ユスおじさまが健在であったのなら俺がする必要のない仕事だ。おじさまの仕事ではないが、おじさまが請け負ってくださったことだろう。実際に動くのはその部下たちかもしれないが、俺があれだけ誘拐されたり、誘拐されたり、誘拐されることにはならなかった。
俺の行方不明の知らせに、ユーティの精神状態が悪化したのは言うまでもない。
あれらは俺の落ち度だ。
「どこなのかは、お前の方が知っていると言われても……残念ながら、わかりかねます。フォルクハルト様」
「随分と他人行儀だな」
他人だから普通ではないかと思ったところで、王宮の庭園で友人としてよろしくという挨拶をしたことを思い出す。
ユスおじさまへの失礼な物言いに友人という枠に入れることが困難になっていたと気づく。
何も知らないユーティと第一王子であるフォルクハルトは違う。そう思っているからこそ、苛立ちや不快感がある。
我が国の中でミーデルガム家がどれだけ重要な位置にあるか、分からないのは問題がある。
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