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022 俺が嫌った人間の筆頭1-1

 庶民の七歳と貴族の七歳は違う。  とくにフォルクハルトの場合は、遅くとも四十年後には国を背負う人間だ。  カールが王位に就いたとしても兄として支えるのではないだろうか。  それともこの世界でもサエコと共に生きようとするのだろうか。    何も知らない相手だと分かっているのにフォルクハルトを優しい目で見れないのは、婚約者ではないからかもしれない。    伴侶として添い遂げる相手を悪く思いたくない気持ちが以前の俺にはあった。  今はその気持ちが全くない。  以前はいろいろな理由をつけて、仕方がないのかもしれないと思い込もうとしていた。  婚約者として第一王子は立てるべき相手であり、周囲の目があるところではなるべく小言も口にしなかった。  フォルクハルトの失言をいつも誤魔化していたが、これも間違っていた。  失言をしているという自覚もなく成長させてしまったかもしれない。    やはり、一切近寄らずに距離を置いておくのがいい。   「フォルクハルト様、カールはどちらに?」 「弟のことをどうしてカールと呼ぶ」 「ご本人様の希望でしたので」    王宮の庭園でのやりとりを忘れてしまったのだろうか。  興味のないことは記憶しない人なので仕方がないかもしれない。   「なら、俺のことはフォルクと呼べ。俺が希望しているのだからいいだろう」 「フォルクハルト様、望めば何でも叶うとお思いですか?」    皮肉でも嫌味でもなかったが、見慣れた不快そうな顔をされてしまった。  嫌がらせでも、意趣返しでもない。   「俺は俺の大切な人を悪く言う相手が嫌いです」    口にしてからフォルクハルトへの苛立ちの種類が頭の中で整理される。  俺はずっと俺への不満は自分の至らなさが原因だと飲み込んできた。  だが、フォルクハルトの陛下に対する言動も、ユーティへのあたりの強さも、心の底から嫌いだったのだ。    人を嫌うことをほとんどしてこなかった俺は、フォルクハルトへの気持ちに気づいていなかった。  陛下の手前、フォルクハルトを嫌ってはならないと思い込んでいた部分も大きい。  

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