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023 男の子って面倒くさいよね1-1

 自分本位な考えで人を追い詰めたことを俺は忘れていない。    以前と今は違うなんてことは通らない。  クロト・プロセチアという俺が地続きでここにいるのだから、なかったことにはならない。  自分の間違いを覚えている自分がいる限り、なくなりはしない。    オピオンは法の下で裁くべき人間だった。  慕われていた好青年な司祭の裏の顔は人々に衝撃と混乱をもたらすかもしれない。  だが、亡くなった少女たちの遺族の気持ちを考えれば、目に見える形での処罰が必要だ。    正しいものがなんであるのか、当時も振り返ってからも、わかっていた。  自分の選択を悔やんでいた。    同じだけ、助けるだとか、上手く使うということへの嫌悪感があった。  人材として優秀だと理解した上で、それでも俺はオピオンを選ばなかった。  オピオンの生い立ちへの同情はある。  自分よりも年下の人間への異常なまでの執着は男女のどちらであっても哀れなものだ。  少女を攻撃し、少年を守ろうとする。  その根底にあるのは、救われなかった過去の自分だ。  悲しく、痛ましい話だが、情状酌量などありえない。  どれだけの苦しみがあろうともユースティティアへの危害を俺が許す理由にならない。なるわけがない。    けれど、割り切らなければならない相手でもあった。  オピオンの力はとても優秀で汎用性が高い。  味方であるならこれ以上なく心強い相手になる。    父や陛下なら、オピオンをうまく使って民衆を扇動したり、混乱を鎮めるだろう。  その想像できたのなら、彼を死なせるべきではなかった。  陛下の力になるのなら、彼の罪も、人格も関係ない。  そう思わなければならなかった。  そう思えなかった。    自分の中にある衝動を理由にして、他人の死を望んだ。  幼かったという言い訳はできない。  フォルクハルトにそれを許さないのだから、自分にだって許してはいけない。    毒は使いかた次第で薬になる。  裁くにしても使ってからでいい。    仕えるものは使うべきだ。  仕えずとも使えるのなら使い倒してから考えればいい。    上に立つ者は公私混同をしてはならない。冷静でなければならない。  陛下は同時に上に居るからこそ、公私混同が許されるのだとも言っていた。  上とは、誰も逆らえない場所だ。    俺の後悔は人を死に至らしめたことではないのかもしれない。  陛下に捧げるべき力を自分のわがままで捨てたことに対する後ろめたさだ。  人の命をなんだと思っているのだとフォルクハルトに殴りつけられる考えかた。  

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