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2.甘いワガママ
「ン……ふぅ……」
ロキの舌に口腔を掻き回され、バルドルの鼻から甘い息が漏れる。
クチュ、チュクッと、卑猥な水音が耳を犯した。
誘うように上顎や歯列をなぞられ、呼気もろとも、ロキの舌に翻弄される。
飲みきれなかった唾液が、ツゥーっと口端を伝い、顎を濡らして……
やっとロキが唇を離した時には、すっかりバルドルの息は乱れ、顔も上気していた。
ロキがクスッと笑う。
「良い顔だね……もっと苛めたくなる」
うっすらと目を開けたバルドルが、ぼんやりとロキを見上げる。
「フフ。そんなに瞳を潤ませて……口付けだけで感じたのかい?」
バルドルの頬が、羞恥に赤く染まった。
「やめて欲しいなら、やめろと言ってごらん?」
挑発するように笑ったロキが、バルドルの頬に触れ、ゆっくりと手を滑らせていく。
頬から首筋へ――
広い襟ぐりから、服の中に侵入した指先が、鎖骨をなぞり……
「あふ……んぁ……」
ビクビクと身体を震わせるバルドルに、ロキはさも楽しそうに笑った。
「さぁ……どうする? 何も言わないのなら、このまま、もっと酷い事をしてあげようか?」
バルドルの耳元でネットリと囁いたロキが、餌を吟味する蛇のように、チロッとバルドルの頬を舐める。
ビクンッ! と震えたバルドルは、恐る恐るとロキに手を伸ばした。
しかし、ロキを押し退けると思われた手は、逆にしっかりとしがみつく。
そしてより密着したロキを掻き抱き、熱い吐息とともに唇を開いた。
「このまま……私を、抱いてください」
ロキの目が、驚きに見開かれる。
何かの間違いだろうか?
期待と思惑がせめぎあい、葛藤する。
「それは――何の冗談、かな?」
わずかな動揺を押し隠し、ロキはバルドルを睨む。
期待してはいけない。
望んではいけない。
しかし、ロキの思いに反して、バルドルは穏やかな微笑みを浮かべた。
「私を、抱いてください。……ずっと、ロキ様を慕っていました」
ロキは息を呑んだ。
ロキもずっと望んで、その度に諦めていた。
「……本当に?」
バルドルが静かに頷く。
「ロキ様だけでした。上辺の私ではなく、私の心まで気遣ってくれたのは」
「バルドル……」
恥ずかしそうな顔をしたバルドルが、そっとロキを抱き締める。
「……いつも、辛そうな顔で見ていましたよね? 私が、みんなに物を投げられている時」
初めてロキが、ビクッと反応した。
「……気付いて――いたのかい? 僕が――いつも、見ていた事を……」
バルドルは頷く。
「いつも辛そうな、悲しそう顔をしていたので……最初は、嫌われているんだと思っていました」
体が密着していて、ロキからはバルドルの顔が見えない。
けれど、必至に抱き締めてくるその腕が、とても強くて、優しくて……
ロキは少し顔を反らす。
「……僕は君が嫌いだよ。君が他の神達に笑う度、僕の心が掻き乱される」
それは――紛れもない嫉妬心。
バルドルはクスクスと笑った。
「それでもあなたは、ここに来てくれました。愚かな事をしようとした私を、気遣ってくださって……本当に、嬉しいのです」
「バルドル……」
小さく呟いたロキが、そっとバルドルの唇に口付けを落とす。
「君が他の神に微笑む度、僕は君をめちゃくちゃにしたい衝動に駆られた。その笑顔を、僕だけの物にしたいと……」
バルドルが頷く。
「私をロキ様の物にしてください。あなたが、他の女神達にするように……」
バルドルの言葉に、ロキは苦笑した。
「言うねぇ……それがどんな事か、君は知っているのかい?」
「いいえ。だから、ロキ様が教えてください」
素直に首を振って見せるバルドルに、ロキはまたクスクスと笑う。
「百戦錬磨の僕を、そんなに挑発して……後で後悔しても、知らないよ?」
バルドルは微笑んだ。
「ロキ様……あなたを、愛しています」
「僕も……君を愛しているよ」
二人はまた、しっとりと口付けを交わした。
角度を変えて、何度も、何度も……
その合間に、ロキは邪魔な服を脱ぎ捨て、バルドルの服も奪い取った。
バルドルのまばゆいほど白い肌が、惜し気もなく曝される。
「美しい……まつ毛まで、真っ白だね」
「ロキ様……」
少しイタズラに笑ったロキは、そっとバルドルの脇に手を這わせた。
「ン……」
バルドルの身体が、ヒクンと震える。
「気持ち悪いかい?」
ロキのカラカウような言葉に、バルドルは静かに首を振る。
「……少し、くすぐったいです……」
「すぐに、何も考えられないほど、気持ち良くしてあげるよ……」
ロキの手が脇から腹部に滑り、労るように優しくバルドルの全身を撫でた。
「あ……はン……」
熱い吐息を漏らして、バルドルが恥ずかしそうに身を捩る。
「初々しくて可愛いよ、バルドル。もっと鳴いてごらん……」
「あ、あぁん!」
ニヤリと口角を上げたロキが、そっとバルドルの乳首を摘まむ。
甲高い声を上げたバルドルは、弓形に背筋を反らしてビクビクと震えた。
「君は本当に淫乱だねぇ? こんなにダラダラとお漏らしして……」
「あぁっ……そんな、ヤダぁ……」
触れるだけの口付けで黙らせたロキは、素早くバルドルの下半身へ移動する。
そして彼の屹立をパクッと咥えた。
「あああ、あぁんっ!」
甲高い声を上げたバルドルの身体が、ビクン! と跳ねる。
硬くなったバルドルの竿に舌を沿わせ、ロキは頭を上下に振りながら、唇で激しく扱いた。
「あぁっ……ダメ……! ひゃんン!」
よがり狂うように頭を振り乱し、ロキに押さえ付けられたバルドルの下半身が、ガクガクと震える。
そっと片手でバルドルの右足を撫で、ロキはおもむろにその足を上げさせた。
片足をロキの肩に担がれ、誰にも曝された事の無いバルドルの蕾が、あらわになる。
バルドルの自身を咥えたまま、竿を伝う唾液と先走りに濡れるそこに、ロキはゆっくりと指先で触れた。
「ひゃあ……! そ、ソコは……」
戸惑うバルドルを無視し、ロキは未開発の穴に、ゆっくりと指先を埋める。
「あっ! あ、あ、ああああぁぁぁ!!」
嬌声を上げたバルドルが、一際大きくビクンと震え、ロキの口腔に果てた。
コクリと喉を鳴らして、ロキはそれを咽下する。
ぐったりとベッドに沈み込んだバルドルは、全身で荒く呼吸した。
強過ぎる快感に、バルドルの目から涙が溢れ、口端から顎にヨダレが伝う。
その顔も、バルドルだと妙に艶めいていて、妖しい美しさがある。
「まだ終わりじゃないよ? これからが、本番なんだからね」
うっとりとバルドルを眺めたロキは、またゆっくりと中に指を進めた。
「あぁ……ン………だ、ダメぇ……」
一瞬ニヤッと笑い、ロキはそっとバルドルの秘部に舌を射し込む。
「やっ……あぁ……」
舌と指で唾液を流し込み、狭い肉壁を優しく揉みほぐす。
ピクピクと震えるバルドルの左足も、肩に担ぎ上げ、射し込む指を増やしていく。
一本……また一本……
計4本の指でバルドルの蕾を広げ、しっとりと唾液を浸透させる。
「あン……ロキ様……」
その内、バルドルが甘い息を繰り返し、達したばかりで萎えていた自身が、ゆっくりと立ってきた。
そしてロキの指が、バルドルのある一点に触れる。
「ひゃあ、あっ……そ、ソコ……ダメぇ……!」
悲鳴を上げたバルドルの腰が、大きく跳ねた。
「ソコってどこだい? ここかな?」
ニヤニヤと笑ってとぼけ、ロキは見付けたばかりのシコリを、何度も擦った。
「ヤぁ! ……だ……ダメぇ……あぁ……」
甘い嬌声を上げるバルドルは、悩ましげに身体を捻らせ、完全に勃起させた先端から先走りを溢す。
「そろそろ、入れても良いかな?」
恍惚とした顔で軽く首を傾げたバルドルに、ロキはそっと口付けを落とす。
そして、今まで揉みほぐしていた秘部から指を抜き、代わりにロキの自身をゆっくりと宛がう。
「あ……」
バルドルの蕾が、吸い付くように受動した。
「分かるかい? 君のココが、物欲しそうに動いているよ?」
「や……ヤダ、そんなこと……」
「違うって言うのかい? 嘘つきだね。なら、これはお預けだよ」
そう言いながら、ロキはバルドルの蕾に、何度も自身の先を擦り付ける。
「あぁ……」
バルドルの腰が、もどかしそうに揺れた。
「ほら、欲しいならちゃんと言ってごらん?」
「あ……ほ、欲しい……です……ロキ様……」
ロキはクスリと笑って、バルドルの顔の横に両手をつく。
「力を抜いて……」
「ロキ……」
バルドルの言葉を遮るように、ロキは彼の唇に口付けた。
舌に舌を絡めて擦り、感じたバルドルの身体から、徐々に力が抜けていく。
それを待って、ロキは一気に欲望を突き入れた。
声にならない悲鳴を上げたバルドルが、白い喉を仰け反らせ、全身でガクガクと震える。
シーツを強く握り締めて、余計に白くなったバルドルの手を、ロキがそっと解いて指を絡めた。
二人で強く握り合う。
ロキがやっと口付けを解くと、荒く呼吸するバルドルの目から、涙がボロボロと溢れた。
「辛いかい……?」
バルドルは首を振る。
「イタ、い……けど、うれしぃ……」
「嬉しい?」
バルドルは恍惚として、ロキを見詰める。
「この痛みは……私が生きている、証……だから」
甘く熱く息を乱すバルドルに、ロキはフッと笑う。
「動くよ?」
そう言い置いて、ロキはゆっくりと腰を動かし、バルドルの中を刺激する。
「ふあ、あぁ……ロキ……さま……」
始めは顔をしかめていたバルドルも、少しずつ快感が勝り、一度萎えた自身もまた天を向いて泣き出す。
ロキはバルドルの屹立を優しく握った。
「あぁ……ヤダ……ロキさま……」
バルドルが快感に溺れ始め、ロキは彼がもっとも感じるシコリを突き上げた。
「あぁンっ! ダメぇ! おかしく、なるぅ……」
「いっそ狂ってしまえばいい。今は何も考えないで、ただ感じていれば良いんだよ」
「あぁ……ロキ……」
バルドルの自身から溢れた先走りが、ロキの指を汚して結合部に絡み付き、グチュヌチュと卑猥な音を立てる。
「今達したばかりなのに、もうこんなに濡らしているのかい?」
「あン……ヤぁ……」
ロキはさらなる快楽を与えようと、バルドルの乳首に口付けた。
舌先で突っついたり、全体を捏ねるように舐めると、背中を反らしてよがったバルドルが、胸を突き出してくる。
「あぁ……ロキ……もぅ、出ちゃ……」
限界を訴えるバルドルに、ロキはさらに腰の動きを強くして、絶頂へと追い上げた。
「あぅ……あ……ああああぁぁぁぁあっ!!」
甲高い絶叫とともに達したバルドルが、キュッとロキの自身を締め付け、ロキも彼の中に熱い激流を解き放った。
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