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第6話
次の日、久住目当ての新入部員を部員たちに紹介するという忌々しい役目を土田に再び背負わされた清平は部室の場所も知らないという体たらくな女子たちを職員室まで迎えに行った。
確かにこの学校では美術と音楽の授業が選択制になっていて、絵よりは音楽の方が楽しそうという単純な理由で美術を取る生徒は少ないので美術室に足を踏み入れたことがない生徒は多数いる。なので部室の場所を知らないこともしょうがないことなのかもしれないが、居心地の良い場所をぶち壊そうとする輩を自ら招き入れなくてはならない状況のせいでそんなことがかなり癇に障る。
職員室の前にいくとバチバチとお互いに火花を散らさんばかりにけん制しあう女子4人組が見えてため息が出た。
部室まで先導する道すがら、女子たちに久住のことで質問攻めにされて適当に躱したがいい加減しつこく「興味もないし、知らん」の言葉が喉まで上がってきたところで部室についた。
中には連日すっかり見慣れた面々が集まっていて絵を描いたり、粘土捏ねていたりそれぞれが活動を始めていた。…相変わらず久住はスマホをいじってるだけだったけれど。
一応部員達には連絡していたが入ってきた女子たちがみんな所謂キラキラしたザ・カースト上位といった感じの派手な子たちだったので部員たちは彼女たちを見るなりあからさまに緊張し出してみんな手を止めて固まっている。
もう何度目かになるか分からないため息をついて、じゃあそれぞれ自己紹介してと女子たちに振った。
どっと疲れていたので我先にと最初に名乗りをあげた二年の尾形と先ほどまで質問攻めしていた時とは違う高い嬌声で久住だけを見据えて名乗った肉食系の同じく二年の宮澤だけが記憶に残ってあとの二人の名前は左から右へ聞き流してしまった。
自己紹介が終わると頬杖をついてスマホをいじる久住の周りに一気に尾形たちが群がり興味なさそうな久住にひるまない様子で黄色い声で話しかけている。
まるでアマゾン川に落ちた生肉に群がるピラニアのような女子たちに他の部員は思いっきり引いている。
吉澤の転校を部員たちに知らせる役目を任されたこと。
久住が副部長になってしまったこと。
そして早速、黴臭い部室が女子たちの秋波でごった返すムンムンとした場所になってしまったこと。
二度あることは三度あるなんて言うけれど、悪いことがこんなに立て続けに起きなくてもいいのに…
清平は目の前の光景を見てがっくしと項垂れた。
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