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第2話

関係がかわったのは、夏。 蒼汰に風俗嬢の彼女ができたのが、きっかけだった。 海で逆ナンされたというその彼女は仕事柄、性技に長けていて歳の割には経験豊富な蒼汰でも太刀打ちできなかったらしい。 蒼汰にしては高い頻度で彼女と逢瀬を重ねていた。 「小池? 週末、親は二人とも出張でいねーし、泊まりにこねぇ? テスト勉強しよーぜ」 「ん? いいよ」 蒼汰の家は両親とも家を留守にすることが多く、そんなときは泊まりに行くことも珍しくなかった。 期末テストを1週間後に控えていたこともあって、その誘いに何の疑問を持たずに承諾した。 その頃は、純粋な親友としてのみ蒼汰をみていた。 自慰すらロクにしたことのない性に未熟な俺は、男同士の関係なんて想像すらしていなかったのだ。 当日、勉強道具をもって訪れた俺が通されたのは蒼汰の両親の寝室だった。 「テスト勉強は??」 「その前にさ、女に教えてもらった気持ちがいいことしてやるよ?」 「え? 」 「マッサージ。めちゃくちゃ気持ちがいいから」 「……いらないし。俺、肩凝らないし。それにマッサージ苦手。くすぐったくて、いーーーってなる」 「いいから、いいから。とりあえず、うつ伏せに寝転んでみ?」 蒼汰は一度言い出したら聞かない。 「やめてっていったらやめろよ?」 「わかった」 しぶしぶベッドにうつ伏せになると、蒼汰は俺の腰の上にまたがった。 「ちょっと腰を浮かして」 言われた通り浮かすと、パンツごとハーフパンツを膝までおろされた。 「ば、バカ! 何するんだよ!!」 体を起こそうにも、馬乗りになられたせいで体の向きをかえることすらできない。 そのときになって、蒼汰が俺の肩ではなく尻の方に顔を向けていることに気づいた。 「ほら、大人しくして。前立腺マッサージ、絶対に気持ちがいいから」 ぬるりとした冷たい液体が、尻の狭間を伝い落ちた。 肌にピリピリとした刺激がはしり、掻痒感と何とも言えないもどかしさがつのる。 やがて蒼汰の指が塗り込むように蟻の門渡りを行き来した。 そして、ツツッと指が肛門に差し込まれた。 「ちょっ!!」 「いいから、いいから」 「何やってんだよっ!! 浣腸なんてガキじゃないんだから!!」 いつものおフザケかと思ったのに、返ってきた反応は予想と違った。 蒼汰は返事もせずに全神経を集中して、まるで大切な物を扱うかのように慎重に指で内部を探る。 その指がある場所をかすめた。 「あ、ああー、何っ??」 「やっと見つけた。ここ?」 「アッーー! や、やめっ」 「ここだろ?」 蒼汰は、執拗にその場所を刺激した。 強烈な刺激に瞼の裏が白い閃光に包まれた。 「あーー、出る!!」 あっと思ったときにはすでに白濁液を吐き出した後だった。 「早ぇーよ! でも、よかっただろ? もっとやってやろーか? 今度は、そこを太くて固いもので擦ってやろうか?」 蒼汰が満面の笑みで顔を覗きこんできた。 キスしそうな距離に顔がある。 粗相を見られた恥ずかしさに、息絶え絶えになりながらも俺はその顔を押し退けた。 「はっ、ぁっ、……、お、おかしいよ。こんなのまるでセックスじゃないか……蒼汰と俺でなんて、変だよ」 「俺とお前だったら、どうして変なんだよっ!」 「……だって、男同士じゃないか! セックスは愛する人と……女性とするものだ……」 すっと、蒼汰の顔から笑みがひいた。 「んだよ……これはセックスじゃねーよ。単なるマスの掻き合いだっつーの」 「えっ」 「男同士なら普通はやるもんだよ。女を抱くための練習だよ。知ってるやつが知らないやつに教えてやるんだよ。女を知らないお前のために知ってる俺が教えてやってるんだろっ? 俺に感謝しろ」 「……なっ!……」 その時だった。 蒼汰のスマホが鳴り響いた。画面を確認すると「くそっ、あいつ邪魔をしに来やがった……」と憎々しげに舌打ちした。 「そのまま、待ってて」 蒼汰はスマホ片手に部屋をでていった。 ベッドの上に半裸の俺が取り残される。 「……シャワーあびたい」 自分の精液とジェルでむき出しの下半身がベトベトだ。 今の隙に服装を整えようにも、こんな状態の上に身につける気になれない。 途方にくれていると、話し声がこちらにやってくる気配がした。 「小池? はいるよ?」 「うん」 素早くシーツで下半身を隠し、迎え入れる。 蒼汰は一人ではなく、田中と一緒だった。 田中は、この4月にはじめて同じクラスになって以来、仲良くしている一人だ。 田中は部屋に入るなり、俺に土下座をした。 止めようとする蒼汰を振り払い言葉を続ける。 「小池? 俺の童貞をもらって?」 「てめー、何を言い出すんだよっ!!」 「ヤリチン蒼汰は黙っとけ。俺は小池に頼んでるのっ! 小池、未経験の俺のはじめての相手になってください」 さっきの蒼汰の言葉がようやく腑に落ちる。 女を抱くための練習。 なるほど、男同士で普通のことなんだ。 「……いいよ。一緒に練習しよう……」 「小池っ! 何を言ってるんだよっ! お前、自分の言ってることわかってる?」 蒼汰が珍しく、動揺して声をあらげる。 何を焦ってるんだ? 「蒼汰こそ、さっき、自分が言ってたんじゃない?」 俺の言葉に蒼汰が目を見開き言葉を失った。 田中が勝利の笑みを浮かべた。 「小池と俺の交渉成立。蒼汰はでていけよ。お前、経験者なんだから今さら練習はいらないだろ?」 「んだよ、初心者同士なんて練習にならないだろ? 俺が指導してやるよ」 「いらねーよ。俺と小池だけでいいから」 「そこはぜってぇ、譲れねぇ。俺が最初に見本を見せる」 「わかったよ。最初は蒼汰からでいいよ」 結局、田中がおれる形で練習会は始まった。 「ほら、さっきの続き。小池? さっきの場所を太くて固いもので擦ってやるよ。最初はバックの方が楽だから。腰をあげて?」 言われるままの姿勢をとる。 蒼汰の顔が見えず、不安が増す。 「いくよ?」 「アッーー!」 肛門にさっきの比じゃない、ものすごい圧迫感。 痛くはないが、少しでも動いたら切れそうなギリギリの状態だった。 「切れる。無理……抜いて」 「大丈夫。小池のここ、ちゃんと柔らかくなってる。ほら、俺の形にくわえ混んでる。このジェルは媚薬入りだから、痛みなんか感じないでしょ? 気持ち良さに集中して?」 恐怖で流した涙を蒼汰は唇で受け止めた。 普段とは違う甘い仕草に胸がキュンと締め付けられる。 女の子の心を射止めるのは、蒼汰のこんなところなんだろう。 「小池? ゆっくりと動くよ?」 蒼汰が腰を使い始めた。 初めは、ソロリソロリと気遣うように。 やがて大丈夫だとわかると例の場所を集中して狙い始めた。 「あ、そこ。んっ」 さっきの昇りつめる感覚。 閃光がすぐそこまでやってきている。 「そうた……い、いきそう……」 触られていないのに、前から先走りが止めどなく溢れている。 「すげー、蒼汰に入れられて、小池のチンコ、勃ってる! もうやり方わかったから、変われよ。お前は続きは女とやれよ」 「こんな状態でやめらるわけねーだろ?」 「いや、さっきマンションのロビーにお前の女いたからさ、15分後に蒼汰が迎えに行くから待っててって言っておいたんだよ」 「……勝手に決めんなよ」 蒼汰は舌打ちをして俺から乱暴にペニスを引き抜いた。 さっきまでの甘い空気は霧散し、心地よい温もりが離れていった。 串刺しにしていたものがなくなり、俺の体はばさりとベッドに倒れこんだ。 「……いっきに萎えた。女の部屋に行くし、なんかあったら電話して」 蒼汰は一瞬で衣服を整えると、一度も振り返らずに部屋を出ていった。 何故か胸がズキズキと痛んだ。

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