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第4話

「んっ ぁあ……あ」 思わず、漏れ出た喘声を手の甲で押し殺す。 女と違う男の自分。 女のような声で興醒めされたくない。 そんな俺の努力を嘲笑うかのように、ますます蒼汰の攻めが激しくなる。 「!!」 蒼汰の指が体内の切ない所と胸の尖りを同じリズムで擦りあげる。 やばい、イきそう。 最初から上手かったけど、最近は最初の比じゃないくらい俺の性感帯を熟知していて一瞬で高められる。 「ほらっ? ここ?」 真っ赤に充血して、はしたなく滴をたらしたペニスの先端をチロチロと舌で転がす。 ずっと焦らされて、放置されていたそこへの刺激に思わず腰を揺らした。 そうじゃなくて、もっと…… 「我慢せずに、声だして? お前の感じてる声聞きたい。ほら、しゃぶってってお願いして? 」 「……んっ……だ、誰がっ!!」 前戯の時の蒼汰は、かなり意地悪だ。 男に対してこんなことをするのは、本当は嫌なのかもしれない。チクチクと胸が痛む。 回数を重ねるごとに、前戯の時間は長くなり2回、3回といかされる。 それでいて、蒼汰は執拗な愛撫を施しながら俺を極限まで焦らし、意地悪な言葉で俺を嬲るのだ。 俺はというと、もう、誤魔化しようのないほど蒼汰のことが好きになっていた。 女好きの意地悪な最低男。 ちょっと顔が良いだけ。 俺のことなんて、これっぽっちも好きじゃない。 他の男に抱かせるために、男の尻に平気で指を突っ込むことが出来る男。 なんで、こんな男に惚れたんだ。自分の趣味の悪さが信じられない。 「ほら、意地をはらずに可愛くおねだりして? 言わない限り、このままイかせてあげないよ?」 「……うっ……も、もう、準備はいいから……早く、今日のヤツを呼べよ。そいつにイかせてもらうから」 蒼汰からスっと笑みが消えた。乱暴に指を引き抜かれ、体が離れる。 蒼汰はベッドから降りると、カーテン留めのタッセルを外した。 それを俺のペニスの根元に巻き付ける。 ギュッと固結びでキツく締められた。ハサミで切るしか外せそうにない。 「痛い! 何するんだよ!!」 「お前、ムカつくから、今日は射精なしね」 「は? な、なんだよっ!! ちょっ、待てよ!!」 蒼汰はさっさと部屋を出ていった。 すぐに話し声とともに戻ってきた。 今日の相手は、確か上の学年の柔道部の男だった。 「先輩、こいつ生意気なんで、懲らしめてやって」 男は、恥じらいも見せず、一気に服を脱ぎ捨てた。 背は高くないが、がっしりした筋肉に全身覆われている。 男のペニスはすでに立ち上がって臨戦態勢だった。 右手で根元を扱きながら、ベッドに身を乗り出した。 「ほら、口を開けろよ?」 今まで蒼汰が俺のものを口に含むことはあっても、俺が口淫を強要されたことは1度もなかった。 戸惑って蒼汰を見上げると目を逸らされた。 「早くしろよ」 男の左手が顎の関節をこじ開ける。 ぐっと右手でペニスを突っ込まれた。 ツンとアンモニア臭が鼻につく。 気持ち悪い。吐きそうだ。 男のブヨブヨしたものが喉奥を擦り上げる。 逃れようと顔を左右に振っても、しっかりと男の左手でホールドされたまま。 男の突き上げはますます激しくなった。 苦しい。息ができない。 涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。 もう、限界。酸欠で意識が遠いたとき、やっと律動はおさまり喉奥にドロリとしたものが叩きつけられた。 「下手くそ、全部のめ」 男はまだ硬度を保ったままのペニスを引き抜いたものの、俺の口を抑えて吐き出すのを許さなかった。 咳き込みながらやっと飲み込むと、ようやく手を離した。 「つぎは、孔に嵌めてやる」 やっと解放されベッドに倒れ込む。 ゴホゴホと咳が止まらない。 枕に顔を押し当てて、肩で息をする。 苦しい。吐きそう。 背後に気配を感じると同時に腰を持ち上げられた。 男はすっかり萎縮してすぼまった後孔にペニスを押し付けてきた。 体からミシミシと無理矢理こじ開ける音が聞こえる。 やばい。裂ける。 痛い。痛い。もう、やめて。無理。 「やめろ!! こいつを離せ!!」 凄い力で引っ張られ、体を抱き込まれた。 蒼汰の胸に頭を抱き抱えられる。 「先輩、終わり。帰って」 「はぁ? なんだよっ! これからだろ?」 「先輩、やり過ぎだよ」 「お前が懲らしめろっていったんだろ?」 「でも、思いやりが無さすぎる。ちゃんと小池のこと、人だってわかってる?」 「単なる孔だろ? チンポ嵌めて出すだけの気持ちいい孔だろ?」 「違う。そんなんじゃないから。そんな人にこいつを抱かせることはできない。帰って下さい」 「お前だって一緒だろ? 女衒みたいにこいつを人扱いせずに斡旋してるんだから。まぁ、いい。帰るわ」 男は服を素早く身につけると部屋を出ていった。 蒼汰は無言で俺を抱きしめたまま動かない。 「蒼汰?」 「……俺がこんなことをしてるのは……好きだから……小池のことが好きだから……」 頭上から押し殺した苦しげな声。 蒼汰の顔がみたくて、腕を振りほどく。 見上げると、予想と違って静かな表情をしていた。 じっと瞳を覗き込まれる。 「蒼汰?」 呼びかけると顔が近づいてきた。 そのまま、静かに唇が落とされる。 優しい感触。 これまで、蒼汰だけじゃなく色々な人と何回も体を重ねてきた。 けれども、これが俺にとって、信じられないことに正真正銘のファーストキスだった。

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