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第4話
講義の終わり際、みなみはデスクの下でスマホを操作していた。
連絡先を登録し、もうすぐ終わる旨のメッセージを送った。
誠のいないところで何をしているんだろう、とみなみはため息をつく。
浮気と疑われても仕方がないようなことをしていて心が痛む。
だけど、忘れようとしても稔の顔が脳裏にちらつき、忘れたくても忘れられない。
目の保養という対象として、本当に魅力的な人物だった。
「では、ここまで」
教授の言葉で現実に帰った。丁度返事が来ているところだった。
『入口で待ってる』
「ほー。入口に行けばそのイケメンな先輩に会えるわけですな?」
「北斗!」
かあっと顔を真っ赤にする。
まあまあ、と北斗は笑ってみなみをなだめた。
歩きながら北斗は続きを話す。
「でもマジな話、少しでも気がそれたんなら、誠とは縁を切れ。お前のためによくないし、そもそも、あいつお前のこと好きなの?」
「好きに決まってる。昨日だって、……あんなに、愛し合ったし」
最後は恥ずかしくてとても小さな声になってしまった。
好き、愛してる、と誠は愛を囁いてくれるし、行為はとても優しく、愛されていることを実感できるものだ。
嘘のはずがないのだ。
「あ、先輩」
「お?」
メッセージ通り、入口付近に稔が立っていた。
何かの本を読んでいる様子で、通りすがる女性陣から熱い視線を浴びている。
本人は気付いているのかいないのか、涼しい顔で読書を続けている。
そうしているだけでスマートで格好良く、絵になる。
「森下先輩、お待たせしました」
「あ、湯木くん。体調どうだった?」
一番に体調を心配してくれる稔の優しさが心に染みた。
「おかげさまで、治ったみたいです」
「そうか。無理しないでね。これ、買ってきたから持っときな」
そう言って手渡されたのは朝に飲んだ経口補水液だった。
礼を言ってカバンの中にしまっていると、横から北斗が稔に声をかけた。
「初めまして、こいつの同級生の山中北斗っていいます!」
「初めまして。オレは森下稔。そっか、お友達がいるなら安心だね」
「あ……」
このまま別れるのは惜しい、なんて思ってしまった。
その意図を汲んだのか、北斗が「先輩!」と稔を呼び止めた。
「早いですけど、昼ご飯とかどうです?」
ナイス、北斗、と心の中で親指を立てた。そうだねえ、と稔は少し考えた。
「いいよ。学食行こうか」
「はい!いくぞ、みなみ」
今日は体調不良で一時はどうなるかと思ったが、結果オーライだ。
誠には内緒にしていればなんてことはないだろう。
別に浮気をしているわけではないのだから気に病む必要もないはずだ。
二人きりではなく、北斗もいるのだから。
「是非!」
どんなに稔が格好良くてもみなみの恋人は誠ただ一人。
それは揺ぎ無いのだから。
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