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第9話

涙が目尻に溜まる。気を緩めばすぐにでも泣いてしまいそうだった。 「みなみ、」 稔はみなみの手を優しくとり、握ってくれた。とても温かい。 「さっきも言ったけど、セックスというのは好きな人とするべきものなんだ。不特定多数と簡単に関係をもつべきじゃないとオレは思ってる」 稔はベッドに上がり、今にも崩れてしまいそうなみなみを優しく抱き抱えた。 とても優しい抱擁に、なんだか心が落ち着いていく気がした。 「だから、オレにはみなみを抱く資格はないし、オレ自身そのつもりもない」 「……先輩、」 「みなみを嫌いっていう意味じゃないのは理解してくれる?」 稔の言っていることの意味は分かるので、こくん、と頷いた。 セックスは好きな人とするべきもの、その考えが世間一般的ならば、いよいよみなみと誠の関係はおかしいと言わざるを得なくなる。 が、未だみなみはその現実を受け入れられないでいた。 体なんてどうでもいい。心さえ繋がっていれば、好き同士で幸せではないのか、と。 「先輩、オレ、……このままじゃ寝れない」 そう、それもまた事実なのだ。 火照った体を鎮めなければ、今夜は眠れそうにない。 だけど、稔はセックスをしてくれないという。 一人では達することができないみなみは一体どうすればいいというのだろうか。 「助けてほしい」 セックスは好きな人と、という稔のキレイごとのような理屈は理解した。 でも、今はそれどころではないのだ。 体の疼きを鎮めるためにみなみはセックスがしたい。 「ねえ、助けると思って、お願い。一回だけでいいから」 服を捲って下半身をちらり、と見せた。 下着の上からは明らかに固くなったそれが見て分かる。 どうすれば稔はセックスをしてくれるのだろう。 誘惑すればもしかしたら……。 そんな考えばかりがみなみの思考を支配していた。 「オレ、もう限界なんだ。頭がおかしくなりそうなんだ」 みなみは稔に抱きついて、胸元に吸い付いた。 数か所にキスを落とし、稔の下半身にそっと触れる。 言葉とは裏腹に、稔の下半身は固くなっていた。 みなみに対して欲情していない、ということはなさそうなのでほっとした。 みなみは下着を脱ぎ去ると、足をエム字開脚し、稔の方へ向けた。 恥ずかしさなんて何もなかった。稔を誘惑し、一刻も早く、この疼きを鎮めたい、その一心だけだった。 「入れていいよ、先輩」 もう、敬語を使う余裕すらなかった。 みなみは柔らかくなった尻孔を指で広げて見せて、ほら、と稔に見せつけた。 ここまでされて我慢できる男をみなみは見たことがない。 きっと稔だってこうすればアクションがあるはずだ。 期待を込めて稔を見ると、稔は困った顔をして頭をわしゃわしゃと掻いた。 「どれだけ誘惑したら気が済むんだい、みなみ」 「セックスしてくれるまで、かな」 「はぁ……困ったね」 そう言うと、稔はみなみを押し倒した。 ベッドに背を預けながら、やった、とみなみは内心喜んだ。 これできっと稔はセックスをしてくれる、そう思った。 やはり男なんて皆同じなのだ。 綺麗ごとを言ったところで、誘惑すれば皆みなみを抱く。 稔だって、不特定多数の男と大して変わらない。 みなみは天井を仰ぎながらそう思った。

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