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第15話
「初めまして、ゆきちゃん」
先に言葉を発したのは稔だった。
稔はにこ、と微笑んで挨拶をする。
稔の方も、ここで初めて会った、ということにしたいらしい。
ならば、その設定で過ごすだけだ。
「初めまして、稔さん。優しくしてね」
とにかく平静を装わなければ。
誠を見ると、目が合って、笑んでくれて。知人だとはバレていないようで一安心した。
「どう、ゆきちゃん。稔、ツボに入った?おい稔、こっち来いよ」
そう言うと、ケンが稔をベッド際まで引っ張ってきた。
言われなくても、稔はみなみ好みの顔をしているし、稔になら抱かれてもいい、むしろ抱かれたい、とか思ってしまうくらいだ。
昨日は抱いてくれなかったけれど、ここに来たということは、やっぱり稔も何か理由をつけてみなみを抱きたいということに違いない。
ならば昨日、あの時に抱いてくれればよかったのに、と思ってしまう。
稔と目が合った。
何をどうすればいいか分からないようで、稔は少し困っている様子だ。
「いいよ、稔、先に。オレたち見てるから」
「ええ?先って……どうすればいいの?」
稔は困って二人にヘルプを出している。
ケンはにやりと笑うと、稔の背中をぐい、と押した。
勢いあまって稔はみなみに覆いかぶさってしまった。
突然の至近距離に驚いて、みなみもどうすれば分からずその場で固まってしまった。
「……ごめんね」
稔は小声でそう言った。
ごめんの意味が分からずにきょとんとしていると、頬にキスをされた。
稔はそのまま耳元に近付く。
「しないと怪しまれるから」
「……?」
稔はみなみとセックスしたくてここへ来たのではないのだろうか。
もし違うとしたら、何故ここへ来たのだろう。
稔の目的や思考がイマイチよく分からない。
「ゆきちゃん、だっけ?」
稔は声のボリュームを少し上げ、みなみの手を取った。
手の甲にキスをして、にっこりと微笑む。
なんてキザなんだろう、と思ったけれど、その行動にドキドキしてしまう自分がいた。
「オレに体を委ねてくれる?」
「………はい」
稔はにこり、と微笑んで、みなみの鎖骨あたりにキスを落とした。
目を閉じて、その温もりに身を委ねる。
着ていたシャツのボタンが一つずつ外されて、インナーも脱がされて。
上半身が露出すると、稔は丁寧にキスを落としてくれた。
ここに来る男たちがこんなに丁寧に前戯を施してくれることはほとんどない。
大抵は、すぐにズボンと下着を脱がされ、適当に解されて無理に挿入されたりする。
ケガしないように事前にこちらで解してはいるけれど、そこには優しさや愛情なんてものはなく、ただ欲情があるだけだ。
だから、こんなに愛してくれる稔の優しさには抵抗できないし、気持ち良くて我を忘れそうになってしまう。
段々と声も我慢できなくなり、小さく声が漏れ始めた。
じれったくて、後ろの孔がその時を待ち望んでいるかのようにひくひく、としているのが自分でもよくわかった。
ズボン越しでも分かるくらいにみなみの男根も大きさを増し、もういいよ、と言いたくなって稔にぎゅ、と抱きついた。
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