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第17話
部屋に残ったのはみなみと誠、そして稔だった。
他の二人は満足したのか、笑顔で帰っていった。
いつも通り、やることだけやって、あっさりしている。
精液で穢れたみなみを気にしてだろう、今みなみは稔に中を掻き出してもらっている。
後処理を手伝ってくれたのは稔が初めてだ。
「ごめんね、あとちょっとで終わるから」
「うん、大丈夫、ありがとう」
ベッドのシーツはあとで洗うとして、今はシャワーを浴びたい気持ちがある。
ちらり、と誠を見るけれど、誠はそれを許してくれそうにない。
「稔くん、だっけ」
「はい」
「次はいつ来る?」
どうやら誠は稔を気に入ったらしい。
指を抜くと、稔はティッシュで拭きながらちらりとみなみを見た。
みなみとしてはもうここには来てほしくはない。
今日だって結局何回も稔にイかされて、ケンたちのいう「トロトロ」の状態にされてしまって。
途中理性を何度か手放してしまったみたいで記憶が少々曖昧になっているところがある。
気持ち良かったのは確かなので文句は言えないのだけれど。
「もう、来ませんよ」
稔は苦笑を浮かべながら微笑んだ。
「興味があったので、一度、と思ったんです。ゆきちゃんも、きっと来ないでほしいと思ってますよ」
ね、と稔はみなみに笑みを向けた。
流石にうん、なんて言えないので微笑みかけて誤魔化した。
「ゆき、今日は気持ちよさそうだったね。ちょっと妬けちゃったよ」
誠は腰を上げるとベッドへ近付き、みなみの隣に座った。
苗字を呼ばれるのは他の誰かがいるときだけだが、あまり機会はないので思わずどきっとしてしまった。
それに、誠は今、「妬けた」と言った?
今までみなみに対して無関心だと思えた誠が、まさか、そんなことを言うなんて。
信じられなくて誠を見ていると、誠はみなみに近付き、くい、と指で顎を上げた。
「キスしていい?」
「え?」
みなみは稔をちらりと見て、誠に視線を戻した。
他人がそこにいるのにキスをしたいと言ってくるのは初めてだ。
「いい、けど……いるよ?」
「知ってる」
それだけ言うと、誠はみなみにキスをした。
唇が触れ合うだけの軽いキスだけど、そこに稔がいると思うと恥ずかしくて、いつものように唇を広げることができなくて。
だけど、誠からのキスは嬉しくて、そっと手を誠の手の甲に重ねた。
好きだなぁ、と思った。
誠がしていることは最低なことだし、それを受け入れるみなみもバカげている。
そんなことは分かっているのだ。
だけど、こうして刹那に見せる優しさが堪らなくて仕方ない。
みなみのことなんて実はなんとも思っていないのではないか、そう疑っていても、合間に見せる優しさにこうしてすぐに引き戻される。
「溺愛ですね、ゆきちゃんのこと」
「うん、そうだよ」
「なのに、……いや、」
稔は何かを言いかけて、首を振って口を閉ざした。
そして少し考えて、にこり、と笑顔を浮かべた。
「じゃあね、ゆきちゃん。誠さんも、今日はありがとうございました」
ぺこり、と頭を下げると稔は振り返りもせず、部屋を出て行った。
何を言いかけたのか気になるが、あまり良い内容ではなさそうなので深追いはしない方がよさそうだ。
「好き?彼のこと」
「え?!」
なぜそんなことを尋ねるのだろう。
驚いて、だけど、すぐにみなみは首を横に振った。
「顔は好みだけど」
それは正直な話だった。
だけど、だから好き、ということには繋がらない。
顔は好みだし、セックスも誰よりも上手いし、文句なしだけれど、みなみが好きなのは稔ではない。
「オレは誠さん一筋だから」
「一筋かぁ。そっかそっか」
誠は嬉しそうに微笑んだ。
どうやらみなみの回答に満足してくれたらしい。
(間違ってない)
心の中で、みなみは自分に言い聞かせた。
誠が好きだ。
みなみは好きなのは、誠なのだ、と。
(それが、オレの気持ち)
みなみは小さく頷いて、にこり、と誠に微笑みかけた。
こんなにも愛されているのに、何に不満があるというのだろう。
こんなにも、誠は愛してくれているではないか。
(疑うなんて、バカげてる)
この恋は、本物だ。間違ってなんかいない。
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