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美波さんの癒し2

「それで、どうしたんですか?そのこ」 働いているホテルのロビー、そこのトイレの扉を背に秋山君が固まった。 その手には頼んでおいた飼育ケース。 『緊急事態、お願いだから飼育ケース買ってきて』 そう連絡を入れてから約一時間。 詳しい事情もそこそこだったにも関わらず、こうしてきちんと助けに来てくれる秋山君に笑顔を向けた。 「良かった…助かったよ。飛んで逃げちゃうと保護できないからさ。」 右手を伸ばして飼育ケースを受け取ろうとすると、「今空けますから」と秋山君がケースの蓋を外した。 「ありがとう。悪いんだけど、そこのペーパータオルも敷いてくれる?」 壁に取り付けられたペーパータオルを指させば、何枚かを取り出して底に敷き詰めていく。 「こんな感じですが?」 「うん、いい感じ」 ピョロ、ピピッ… 秋山君を待っている間、すっかり懐いてしまった鳥が左手の上で鳴く。 その綺麗な鳴き声にフフッと笑いが溢れた。 「帰りの信号待ちで肩に止まってきてさ。多分どこかのペットが逃げ出したんだろうね。」 保護した場所から自宅まで帰るよりホテルに戻るほうが断然に近いうえに、ここなら秋山君の助けも得られると踏んだ。 まだ着替えも終わらせていないところを見ると、かなり急いでくれたらしい。 「ごめんね、急に。」 「それは構いませんが…」 そう言って左手の鳥を見つめ、飼育ケースを「どうぞ」と差し出してくる。 「ほら、お入り。」 左手をケースに差し込むと、意を察したかのようにピョンっと鳥が飛び降りる。 すかさず蓋を閉めると、閉じ込められた不安からか鳥がバタバタとケースの中で羽ばたいた。 「ごめんね。ケージ買うまではこれで我慢して。」 目線の高さに持ち上げ安心させるように話かけると、ピッ!と大きな鳴き声が返ってきた。 かわいい…まるで言葉が分かってるみたいだ。 透明なケースを一撫でして顔を上げると、こちらをジッと見ていた秋山君と目が合った。 「なに?」 ポカンとした見たことない表情で見つめてくるのに首を傾げれば、困ったように笑われた。 「いや、美波さんもそんな優しい顔するんだなって」 「失礼だな。俺はいつも優しいつもりなんだけど。」 「んー…まぁ敢えてツッコミません。」 秋山君の含みのあるセリフ。 彼の言いたいことは分からないでもない。 以前ほどではないにしても、今でも人間が好きなわけではないから。 どんなに表面上は微笑んでいても、それはやはり取り繕ったものだ。 こうして穏やかな気持ちで話しかけることはない。 「それで、そのこはどうするんですか?」 「とりあえず警察に届けに行くよ。飼い主が見つかるまでは預かるつもり。」 確か動物を保護した時は拾得物として警察に届けるはずだ。 もう飼い主が届け出ていればすぐに再会できるだろう。 「早く家に帰れるといいな。」 外していたマフラーを飼育ケースに巻き付け、コートで覆うように抱きしめる。 これで少しは外の寒さから守れると良いのだけど。 「やっぱり鳥には優しい…」 「何か言った?」 「いいえ、何も。どうぞ美波様」 クスクスと笑いながら、客を送り出す時のように丁寧な仕草で扉を開けられる。 「あ、ケース代は後で請求してね。」 「大した金額じゃ無いですから良いです。それよりも気をつけて。助けがいるようなら声をかけて下さいね。」 「うん、ありがとう。」 お礼を伝えてロビーに出る。 大きな窓の外は小さな雪が舞っている。 保護できて良かった…こんな寒い中放っといたら死んでたかも。 ギュッとケースを抱きしめて、なるべく揺らさないように足早に近くの交番へと向かった。

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