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第3話 逢いたい人

 試合までの追い込みは日々激しくなり、朝練と仕事と午後練の毎日は大変だけど充実はしていた。  けれど、今までそれを平気で熟していたのに、日々の癒しが無いだけでこんなにも疲れが溜まる。  母親がマンションに居座ってから体内時計が壊れたかのように疲れはずっと取れないままだ。  それに、その間、新壱とは仕事場でしか会えず、お互い会議や外回りが続き、母親との事をちゃんと話せずに二人だけで話す時間も取れなかった。 「え!? ミス!? 分かりました! 今すぐに戻ります!」  それに加え、新入社員のミスが発覚。外回りをしていた鉄平に連絡が入った。 「まじかー……」  炎天下の中の外回り。いつもなら屁でもない事が今日は何故かとてもキツイ。  朝練の時もミスを連発したし、明後日が試合なのにこれはマズイ。 「あー……ついてねー……」  このままでは使い物にならない。  鉄平にとってのルーティンは、朝、新壱に優しく起こしてもらい、あの可愛い笑みを見てから始まる。それが無いとこの有様だ。 「疲れ取れねー……」  母親のせいと言えばそうだが、急に息子が男と付き合っているのを知れば仕方ない反応でもあるかと、冷静になった今なら分かる。  けれど、いくら反対されても理解されなくても受け入れてもらえなくても、新壱と別れる気は全く無い。 「さー……戻るか……あっ……」  階段を降りようとした瞬間、フラッと急に頭がふらついた。足取りも宙に浮いているように全く感覚も無い。 ーーーヤバイッ……。  そう思った瞬間、鉄平は階段から落ちていた。  身体中に痛みが走り、薄れて行く意識の中で鉄平は今逢いたい人を求める。 「……いち」  〝新壱〟と名前を口にした鉄平は、そのまま意識を手放した。

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